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2018.11.27.08.59

きのうび

つい、みとれてしまうことがある。
眼の前に顕れるそのかたちにみほれてしまうのだ。

例えば調理用具、例えば文房具、例えば理髪用具、例えば ...。
おもいあたるものを数え上げていけばきりがないが、だからと謂って、そのどこに、そのなにに魅了されているのかをいいあてるのは難しい。
ある用途、ある使用目的に合致した効率のよいかたちを追求した結果であろうと、定義しても良いのかもしれない。
しかし、それに機能美 (Functional Beauty) と謂う語句を与えても良いのか、しばし躊躇う。
と、謂うのは、その用途や使用目的を必ずしもぼくが欲しているとは限らないからなのだ。

100円ショップにいけば、そこに並べられている商品の殆どは、最低限の価格で、要求される用途を全うする為に、製造販売されていると思っても良い。
中には、それとは真っ向から対立する、全く無能で無力であるが為に、その商品価値を主張しているモノもないではないが、それだって、考え方よっては、"要求される用途を全うする"事に主眼が置かれていると看做せない訳ではない。何故ならば、無能で無力である事を求めて、ヒトはその商品を購入するのだから。
すこし例外的な、主力商品の範疇から外れてしまったモノに意識が向かってしまったが、そんなモノもひっくるめて考えれば、本来ならば、それらには機能美 (Functional Beauty) が充実している筈なのである。
しかし、少なくともぼくはそれらの商品に向けて、その語句を起用する事は躊躇われてしまう。

おそらくその理由は、それらの商品がぼく自身の実用に即しているからなのであろう。
逆に謂えば、冒頭に掲げた調理用具や文房具が理髪用具、その殆どは、ぼくにとって無用の存在である。
ある用途の為に、必要かくべからざるモノとして付帯されたかたちが、そしてそのかたちが追求されれば追求され尽くした結果であるが故に、ぼくの眼には、そんな効用とは無縁のかたちで、うつくしいかたちとして、映っているのである。
極端な表現をすれば、少なくともぼくにとっては、それらのモノ、そしてそのモノがたたえているうつくしさというモノは、無能で無力でさえある。

ところで、ぼくがこの語句、機能美 (Functional Beauty) を知ったのは、パブリック・イメージ・リミテッド (Public Image Ltd) の第2作『メタル・ボックス (Metal Box)』 [1979年発表] に於いて、なのである。
その日本盤LPの解説で渋谷陽一 (Yoichi Shibuya) がこう綴っているのである。
「このメタル・ボックスの美しさは、さしずめ音の機能美といっていい」

images
そのアルバム『メタル・ボックス (Metal Box)』は、本国イギリスに於ける初回限定版として、45回転12インチのアナログ盤3枚を缶入りの装丁で発売されたのだ。
ちなみにセカンド・プレス以降は通常盤として『セカンド・エディション (Second Edition』とタイトルを変えて、33回転12インチのアナログ盤2枚として、通常のゲイトフォールド・カヴァー (Gatefold Cover) で発売されている。
国内盤LPは、セカンド・プレスの仕様に則っている。その解説文のなかに、上記の文章が掲載されているのである。
[上掲画像はこちらから]

渋谷陽一 (Yoichi Shibuya) は、上に引用した文章の直前で、こう記している。
「ジョニー・ライドンが自らのアルバムをメタルの缶にパッケージした意図は、レコードの音質を完全に保全する為である。45回転の3枚組にしたのも、オーディオ的ダイナミズムをより有効に実現する為のものだ」

と、謂う事は、最初の引用文にある「メタル・ボックス」とは、作品それ自体をさしているのではなくて、その容器とそれに封入されている音楽メディアの事なのである。
引用した箇所に限定して謂えば、そのなかにある音楽そのものには一切、彼は触れていないのだ。

ところで、その音楽に関してはどう語るべきかは、ここでは問題としない。

音楽に於ける機能美 (Functional Beauty) とは一体、なんなのだろう。
ぼくが想うのは、その点で、しかも未だに明らかな解答を見出してはいない。

すくなくともある目的を達成する為の音楽や、特殊な用途の為にのみ奉仕する音楽や、ある限られた環境に於いて鳴り響く為の音楽ではないだろう、と謂うのは解ってはいるのだが。

次回は「び」。
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