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2018.10.21.08.51

"IN CAMERA" by Peter Hammill

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ほかのある人物をひきあいにして、その人物を語る。それは決して効率のよい事ではないし、褒められる事でもないだろう。
必ずしもそこで真実が語られるわけでもないからだ。
もちろん、これは彼に関しても同様だ。

だからと謂って、それ以外の方法で的確に語り切る事が出来るのかと謂うと、それもおぼつかない。
彼、ピーター・ハミル (Peter Hammill) と謂うアーティストとその音楽性を、それだけに拘泥して的確に指摘したモノを、ぼくは読んだ記憶はない。
だからと謂って、その重責をぼくが果たせる訳でもない。

とは謂うものの、掌をこまねいている訳にもいかない。
なので、最初に否定したその方法論を手始めにとってみる。
もしかしたら、巨木を鑿と金槌をもって削っていけば、いつしかそこになにか、ある像が顕れるかもしれない、そんな不確かな期待をもって、ここではそこから始めてみる。

彼と、ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) を並べてみる。ふたりともその活動の初期に於いては、カリスマ・レコーズ (Charisma Records) に所属していた。しかも当時はそれぞれソロ・アーティストではなかった。前者は、ヴァンダー・グラフ ・ジェネレーター (Van Der Graaf Generator) を率い、後者はジェネシス (Genesis) を率いていた。そして、それぞれともにある時期、バンドを離れてしまう。

その後のふたりとバンドの行方を追って行くと、こんな感じだ。
前者にとっては、バンドはほぼイコールの関係であって、自身の表現活動の一環のひとつとして、バンド活動とソロ活動はあった様に思える。そして、緩やかなかたち、曖昧なかたちをもって、バンドからソロへと移行する。彼のファースト・ソロ・アルバム『フールズ・メイト (Fool's Mate)』 [1971年発表] が当初、バンドの作品として制作されたと謂う事実がその証左である。
後者と、彼に遺されたかたちとなったバンド、ジェネシス (Genesis) とはそれぞれちがったかたちで活動を続けて行く。そして、それぞれが異なるかたちでの成功を獲得していく。その結果、かつて後者がそのバンドに所属していたとは考える事も出来なくなる。それ程におおきな違いだ。しかし、彼の脱退直後は、だれのめからみても、バンドの存続が不可能に思えたのも、事実なのである。当時、そのバンドの一切は、彼の個性と才能によって初めて存在していた様に思えていたからである。

ふたりにとって、バンドとは如何なるモノなのだろうか。そこを突き詰めていけば、ピーター・ハミル (Peter Hammill) の音楽がみえてくるのかもしれない。

尤も、それ以上にふたりの音楽家における差異は、別のところにある。それは発表される作品の多寡だ。前者が膨大な作品群を誇るのに対し、後者は圧倒的にすくない。数だけを比べれば、ピーター・ハミル (Peter Hammill) はピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) の、数倍、否、十数倍もの存在感があるのである。

では、ここでピーター・ハミル (Peter Hammill) の隣りに、フランク・ザッパ (Frank Zappa) を置いてみよう。彼も膨大な作品群を遺しているからだ。だが、その大量な作品群の有様は、極めて対照的である。個々の作品での表現手段、すなわち音楽の編成への態度がまるで違うのである。
前者は殆ど2択だ。弾き語りもしくはそれを補うかたちでの小編成、もしくはかつての戦友であるヴァンダー・グラフ ・ジェネレーター (Van Der Graaf Generator) だ。一方、後者は多岐に渡る。所謂ロック・バンドの編成もあれば大所帯のビッグ・バンドもあればオーケストラもあれば、シンクラヴィア (Synclavier) による完全なソロもある。

だが、自身が率いるバンドとの関係性や辿った歴史をみれば、ピーター・ハミル (Peter Hammill) にとってのヴァンダー・グラフ ・ジェネレーター (Van Der Graaf Generator) は、ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) にとってのジェネシス (Genesis) よりも、フランク・ザッパ (Frank Zappa) にとってのマザーズ・オブ・インヴェンション (The Mothers Of Invention) の方に近い様に思われる。

と、こんな風にピーター・ハミル (Peter Hammill) と謂うアーティストをほかのアーティストを参照し、その都度比較していけば、いつかは彼の実像がみえてくるのかもしれない。
いや、おそらく、いつかはそれが可能だろう。
だけれども、それをぼくが行うのは到底に不可能なのだ。時間もかかる。
個人的には、彼とボブ・ディラン (Bob Dylan) の比較論を試みたいところではあるが、それぞれを語り切る程、ぼくはそれぞれの作品を聴き込んではいない。本来ならば、それぞれの歌詞をいつか読み比べてみたい、と謂う気持ちだけはあるのだが、一朝一夕にそれが叶うモノでもない。
[ここでふたりの音楽家になんらかの近似値があると謂いたい訳ではない。結局のところ、このふたりはまったくもって、みずとあぶらの様な対立しかないのかもしれない。ただ、もし仮にそうだとしても、身をもってそれを体感したいという欲求だけがあるばかりなのだ。]

ところで、ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) とフランク・ザッパ (Frank Zappa) をこの拙稿にひっぱりだしたのには理由がある。
このふたりの、世界や社会に対する態度を鑑みると、おおきな意味で似ている様な気がしたからなのである。そして、このふたりの姿勢とは別の、ピーター・ハミル (Peter Hammill) には真っ向、異なる姿勢や視線がある様に思えるのである。

彼の作品にむかうといつも、ぼく自身のなかにある誤謬や矛盾にばかり気づかされる。気づかされるばかりではない。そのとき、まるでそこに凶器とみまがう様なモノがそこにあるのである。喉元に匕首を突きつけられた様な趣きもあれば、あと数秒で爆発する時限爆弾の様な装いもある。いずれにしても、猶予も保留も許されない。そんなまったなしの状況だ。
だから、いつもいたたまれなくなってしまう。
作品それぞれによって、その具体的な指摘が向かう方向は様々なのだが、いつだってどれだって、逃げるに逃げられない窮地にぼくはたたされてしまう。
しかも、彼が指摘するのは、あくまでもぼくの内部、内心にあるそれなのだ。
それが、ピーター・ガブリエル (Peter Gabriel) とやフランク・ザッパ (Frank Zappa) とのおきなちがいだ。彼等が呈示し糾弾するのはあくまでも、他者との関係性における自身の態度なのであるのだから。

本作も同様。
いつ聴いても、深い深い闇へとおりていき、そこにたってさらなる闇を指摘されている様な気がする。
険しい山脈の頂点に引き上げられて、断崖絶壁の渕から奈落の底にある、まっくらな下界を覗き込まされていると謂っても良い。
だが、それは決して凍える様な様相を呈している、冷徹なサウンド・プロダクションだけによるのではない。

後に、スタジオ・ライブ・アルバム『ザ・ピール・セッションズ (The Peel Sessions)』 [1995年発表] を聴いた際の事である。そこで本作収録曲の幾つかが再演されている。そして、自身による弾き語りであるのにも関わらずに、そこで唄われているそれらの曲は、本作収録ヴァージョン以上に、ぼくに差し迫ってきたのである。

ものづくし (click in the world!) 192. : "IN CAMERA" by Peter Hammill


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"In Camera" by Peter Hammill

1. FERRET AND FEATHERBIRD
2. (NO MORE) THE SUB-MARINER
3. TAPEWORM
4. AGAIN
5. FAINT-HEART AND THE SERMON
6. THE COMET, THE COURSE, THE TAIL
7. GOG
8. MAGOG (IN BROMINE CHAMBERS)

ALL TRACKS BY PETER HAMMILL
PRODUCED BY PETER HAMMILL
PUBULISHED BY STRATSONG

(P) 1974 VIRGIN RECORDS LTD
(C) 1974 CHARISMA RECORDS LTD

ぼくが所有しているCDでは以上のクレジットしかされていない。こちらを参照して不足していると思われるクレジットを以下に掲載する。

Recorded at Sofa Sound, Worth, Sussex, Dec 1973 - April 1974 (4-track analogue)
Overdubbed and mixed at Trident Studios, London W1, April 1974

Produced and engineered by PH.
Overdub/Mix engineering & ARP programming by David Hentschel

Musicians: GUY EVANS drums (3,7)
CHRIS JUDGE SMITH percussion (8)
PAUL WHITEHEAD percussion (8)
otherwise all PH

Cover design by Frank Sansom / PH
Photography by Mike Van der Vord (front)
Gordian Troeller (inner)
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