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2018.10.09.11.52

まおうだんて

マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』 [永井豪 (Go Nagai) 作 1971年 週刊ぼくらマガジン連載] は、同じ作者のマンガ『デビルマン (Devilman)』 [永井豪 (Go Nagai) 作 19721973週刊少年マガジン連載] の前駆的作品として位置付けられている。それだけではない。その作者の後に続く幾つもの作品に大きな影響を与え、しかも、一見異なるジャンルの作品の様に思われる、同じ作者のマンガ『マジンガーZ (Mazinger Z)』  [永井豪 (Go Nagai) 作 19721973週刊少年ジャンプ連載] にも大きな影を落としている。
作者永井豪 (Go Nagai) も、それを裏付ける発言をいくつもしているし、個々の作品を丹念に読めば、否応もなくそれに気づかされる。
無論、ここで謂う影響とは、魔王ダンテ (Demon Lord Dante) がマンガ『デビルマンレディー (Devil Lady)』 [永井豪 (Go Nagai) 作 19972000モーニング連載] に客演したと謂う程度の事ではない。
が、しかし、この拙稿では、それとはすこし違った事を綴ってみたいと思う。

ぼくは、マンガ『デビルマン (Devilman)』をリアルタイムで掲載誌である雑誌『週刊少年マガジン (Weekly Shonen Magazine)』で毎週読み続けていた人間である。そのぼくは、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』の存在は知ってはいたが、定期購読には至らなかった。単純に、毎週発売する週刊誌を複数購読出来る経済的裏付けが当時はなかったのである [ひらたくいえば、おこづかいはそんなにもらえていなかった、しかもそのうえほしいものはそこらにいっぱいあったということだ]。
だから、マンガ『デビルマン (Devilman)』の連載完結を待って、その単行本全5巻を購入した後に、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』の単行本全2巻を入手したと記憶している。

そこに描かれているのは、マンガ『デビルマン (Devilman)』と似ている様でありながら、全く異なる世界観に基づくモノだった。しかも未完。
短い未完成の物語は、その世界観を完全なかたちで支持出来ていない。寧ろ、幾つもの伏線や設定が未回収のまま放置されていて、それが読者であるぼくにとってはとても悔しいモノに思われた。つまり、そのマンガとそこで呈示された世界観にすっかりと魅了されたのである。
逆に謂えば、未完であるからこそ、想像力が徒らに刺激されたとも謂える。

それ故に、マンガ『デビルマン (Devilman)』はマンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』がなしえなかった事を完遂せしめた作品であると謂う事は、疑いのない事実としてぼくは受け止める事が出来るのである。むしろ、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』では決してなしえなかった様な物語の展開、そして決着をも行った様にも思える。そこで示された挿話や設定の幾つかは未消化でさえあるが、それ故にこそ、後に『デビルマン・サーガ (Devilman Saga)』 [註:同名のマンガ作品をさしていない] と呼べる様な大きな物語を生み出す事が出来た。
仮にマンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』がひとつの物語として完結をみたとしても、決してマンガ『デビルマン (Devilman)』の様な地位を占める事は出来なかっただろう。
つまり、逆に謂えば、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』は未完なるが故に、その責を果たし、後への礎となったのである。

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ところで、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』の掲載誌は雑誌『週刊ぼくらマガジン (Weekly Bokura Magazine)』である。マンガ『デビルマン (Devilman)』の連載開始された時には既に休刊していた。しかし、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』の単行本を入手した際には、あらためて、その掲載誌に連載されていた同期の作品群には、興味深くおもわれるモノが幾つかあった、そう気づかされた。マンガ『仮面ライダー (Kamen Rider)』 [石森章太郎 (Shotaro Ishinomori) 作 1971年 週刊ぼくらマガジン週刊少年マガジン連載] に、マンガ『タイガーマスク (Tiger Mask)』 [梶原一騎 (Ikki Kajiwara) 原作 辻なおき (Naoki Tsuji) 作画 1971年 週刊ぼくらマガジン週刊少年マガジン連載]。それらからは、ちょっと格と知名度は落ちるがマンガ『デスハンター (Death Hunter)』 [平井和正 (Kazumasa Hirai) 原作 桑田次郎 (Jiro Kuwata) 作画 1969年 週刊ぼくらマガジン連載] も忘れる事の出来ない作品だ。
[上掲画像はこちらから]

そして、マンガ『仮面ライダー (Kamen Rider)』及びマンガ『タイガーマスク (Tiger Mask)』と、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』を対照してみると、ある事実に気づく。まるでネガ・フィルム (Negative Film) を観る様に、反転した世界がそこにあるからだ。

マンガ『仮面ライダー (Kamen Rider)』とマンガ『タイガーマスク (Tiger Mask)』の物語を抽象化させ、次の様に短く綴ってみる。

ある人物が、ある組織に誘拐されて身体改造を施される。その結果として、彼はその組織に奉仕する事を強要される。しかし、彼はその要請を拒否し、その組織から離脱する。組織は彼を裏切者として彼の生命を脅かし続ける。

ふたつの異なる作品の世界観を無理矢理、ひとつの世界観に統合してみたが、上の段落は決して間違えてはいない、と思う。

そして、上に綴った段落をマンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』と照応させてみよう。
全く異なる物語ではないか、そんな指摘は立ち所に想像はつくが、あらためて作品をよく読んでもらいたい。
その段落の前半部が、まるっきり当て嵌まるのである。つまり「ある人物が、ある組織に<中略>強要される」までは、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』もそっくりそのまま該当しているのである。

日本アルプス (Japanese Alps) 登山中の宇津木涼 (Ryo Utsugi) はあらぬ事かヒマラヤ山脈 (Himalayas) に瞬間移動 (Teleportation) をし、そこに氷壁に封じ込められた魔王ダンテ (Demon Lord Dante) に遭遇する。彼は魔王ダンテ (Demon Lord Dante) の誘惑に屈し、魔王ダンテ (Demon Lord Dante) の封印を解除してしまう。自由の身となった魔王ダンテ (Demon Lord Dante) は第一の生贄として宇津木涼 (Ryo Utsugi) を殺害しその肉体を食するが、何故か、魔王ダンテ (Demon Lord Dante) の肉体は宇津木涼 (Ryo Utsugi) の精神に支配される。

この物語冒頭の挿話がそれなのである。
そして、その挿話を語り終えた地点からこの物語は飛躍を遂げるのである。マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』の本領はそこから開始するのだ。

と、謂う様な点を踏まえれば、もしかしたら、こんな見解を推察する事も可能だ。

作品の連載時、読者の大半は、保守的な、善と悪との対決をそこに当初はみようとしたのかもしれない。悪に誘拐された少年が悪によって超人的な身体を入手し、その肉体をもって悪と対決する。
そんな物語の典型を、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』にみようとしたのかもしれない。それが改造人間 (Cyborg) でもなく、プロレスラー (Professional Wrestler) でもなく、悪魔 (Demon) である。そしてそれがそのマンガの特色なのだ、と。

しかし、それがあるとき、突然に裏切られる。
主人公である宇津木涼 (Ryo Utsugi) が自身の出自、その正体を初めてしったそのときだ。

そしてそこで、その物語は未完の烙印を背負って終了してしまうのである。

次回は「」。

附記 1. :
マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』のその掲載誌への連載開始は19711月1日号において、である。
その一方で、マンガ『仮面ライダー (Kamen Rider)』の同誌への連載は、同年4月12日号において、である。
そんな事実関係をつきつけると、上で考察した事柄には誤謬が潜んでいる様にも思える。本来ならば、マンガ『仮面ライダー (Kamen Rider)』とあるところを、おなじ作者の同趣向の作品、しかも当時の大ヒット作、マンガ『サイボーグ009 (Cyborg 009)』 [石森章太郎 (Shotaro Ishinomori) 作 19641965週刊少年キング連載] に差し替えて書き直すべきかもしれない。
但し、同じ時季に同じ雑誌に連載されていた同傾向と思われる作品が、あるときを境に異なる局面に展開したと謂う驚きをここで綴ってみたかったのである。

附記 2. :
だからと謂って、マンガ『タイガーマスク (Tiger Mask)』だけを取り上げての比較では、説得力が弱い気もするのだ。かたや悪魔 (Demon) の伝奇めいた物語で、かたやプロレス (Professional Wrestling) と謂う一スポーツの物語だ。両者からみえるのは明快な差異ばかりで、論旨の必する共通項を指摘しがたい。
ちなみに、マンガ『タイガーマスク (Tiger Mask)』に登場する組織、虎の穴 (TIger Hole) はアルプス山脈 (Alps) にある。

附記 3. :
マンガ『仮面ライダー (Kamen Rider)』とマンガ『タイガーマスク (Tiger Mask)』は掲載誌休刊に伴い、週刊少年マガジン (Weekly Shonen Magazine) に於いて連載を継続している。

附記 4. :
上に挙げた雑誌『週刊ぼくらマガジン (Weekly Bokura Magazine)』の 掲載作品のどれも [と謂う事はここで殆ど触れられないマンガ『デスハンター (Death Hunter)』も含めて] 貴種流離譚 (Initiation Story) と謂う構造に従って、読む事が出来ると気づく。
少年がある組織に囚われて、そこから脱出した結果、あらたな身体を入手したと謂う点に於いて、である。
その組織の支配下にある際に、彼は身体ばかりか、あらたな自意識をも生じさせている。殆どの作品に於いては、それは正義感と呼びうるモノだが、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』に於ける宇津木涼 (Ryo Utsugi) に於けるそれも、そう呼びうるモノなのだろうか。
もしかしたら、その名をどう呼ぶべきだろうか、と謂う疑問がこの作品の最大のテーマなのかもしれない。

附記 5. :
マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』に於ける宇津木涼 (Ryo Utsugi) に比肩しうる体験をしたのは、マンガ『デビルマン (Devilman)』に於いては飛鳥了 (Ryo Asuka) だ。決して不動明 (Akira Fudo) ではない。
つまり、マンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』とは飛鳥了 (Ryo Asuka) [に相応する宇津木良 (Ryo Utsugi)] を主人公とした物語なのである。それが未完で終わったが故に、マンガ『デビルマン (Devilman)』に於いては飛鳥了 (Ryo Asuka) の旧友である不動明 (Akira Fudo) なる人物を主人公に据えて、彼の視点に於いてマンガ『魔王ダンテ (Demon Lord Dante)』を再構築したと謂えなくもない。
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