2017.04.18.09.42

どくたーぽち

永井豪 (Go Nagai) 初期の代表作であるマンガ『キッカイくん (Kikkai-kun)』 [19691970週刊少年マガジン連載] には、主人公キッカイくんこと摩訶キッカイ (KIkkai Maka aka Kikkai-kun) とその家族の破天荒な行動に何度も振り回されて、悲惨な目にあう人物が少なくとも3人登場する。

ひとりはキッカイくん (Kikkai-kun) の祖父、摩訶フユカイ (Fuyukai Maka)。
科学万能の申し子の様な、摩訶家 (The Maka Family) [発明一家なのだ] にあって、ただひとり、その成果を謳歌しない。寧ろ、科学批判、文明批判の立場にいるのだ。そして、それ故に、毎回登場する摩訶家 (The Maka Family) の発明品に振り回されるばかりか、他の家族達によって、その格好の実験台へと貶められてしまう。物語後半では、身体改造をも施され、祖父としての威厳はおろか、飼い猿の様な位置づけとなってしまう。

もうひとりは、キッカイくん (Kikkai-kun) の担任、炎天下冷奴 (Entenka Hiyayakko) だ。彼もまた、摩訶フユカイ (Fuyukai Maka) の様に、摩訶家 (The Maka Family) の珍発明に翻弄される訳だが、祖父との違いは、常に抵抗し反抗するところにある。それは教師としてのそれと謂うよりも、同級生や同年代のそれに近い。永井豪の同時期の傑作であるマンガ『ハレンチ学園 (Harenchi Gakuen)』 [19681972週刊少年ジャンプ連載] に登場した、ヒゲゴジラこと吉永さゆり (Sayuri Yoshinaga aka Hige Godzilla) に代表される数々の教師群と、行動様式や意識のあり方はそう変わらない。
但し、炎天下冷奴 (Entenka HIyayakko) には彼等と唯一にして絶対的な差異がある。それは、自身の作品内に登場する際の作者、永井豪 (Go Nagai) 自身の肖像がそのまま流用されているところだ。つまり、炎天下冷奴 (Entenka Hiyayakko) =永井豪 (Go Nagai)
それに起因するのかどうかは不明だが、作品の最終部に於いて、炎天下冷奴 (Entenka Hiyayakko) は『キッカイくん (Kikkai-kun)』と謂う物語そのものを破壊してしまう。その結果、主人公達はまるで、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』 [19731974週刊少年マガジン 連載] の舞台である関東平野 (Kanto Plain) そのままの、混沌として無法で無政府な世界に放り出されてしまうのだ。
[その際のオチとして、身体改造された摩訶フユカイ (Fuyukai Maka) の身体改造後の肉体が効果を発揮する。]

そして、最期のひとりが本記事で語るべき主人公、ドクター・ポチ (Dr. Pochi) なのである。

ドクター・ポチ (Dr. Pochi) は、主人公キッカイくん (Kikkai-kun) の父親である摩訶キュウクツ (Kyukutsu Maka) を不倶戴天の敵と付け狙う。この物語に於ける悪役だ。だから、その立場上、常に主人公一家に出し抜かれると謂うのは、物語の構造上、致し方ないモノなのかもしれない。しかし、彼の不幸はそれだけではない。
彼の唯一の部下にアルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世 (Alphonsus Louis Steinbeck III) がいる。部下ではあるが、本人にはその自覚はない。寧ろ、彼の視点では、彼の主人こそが彼の部下である様だ。
そして都合の悪い事に、外観上も名称上も、彼の方がたかい地位にみえてしまう。並べてみよう。
ドクター・ポチ (Dr. Pochi) とアルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世 (Alphonsus Louis Steinbeck III)。
前者は服装こそ黒マント (Black Mantle) に黒ステッキ (Black Cane)、そして黒いシルクハット (Black Top Hat) とまるでアルセーヌ・ルパン (Arsene Lupin) [モーリス・ルブラン (Maurice Leblanc) 作 短編 『ルパン逮捕される (L'Arrestation d'Arsene Lupin)』 1905年初登場] のイメージをそのまま抽出したかの様な衣装なのだが、如何せん短躯なのだ。平然と出腹を丸出しにし、不遜な振る舞いに終始するアルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世 (Alphonsus Louis Steinbeck III) の半分程の身の丈しかない。一瞥するだけでは、後者の飼犬が前者であるかの様だ。
これでは第三者が勘違いするのも当たり前だ。
そしてそこから発生する勘違いがまかり通って、前者は常に後者に振り回される。
そのたびにドクター・ポチ (Dr. Pochi) はアルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世 (Alphonsus Louis Steinbeck III) にむかってこう叫ぶ。
「せっかん、せっかん」と。

その後、マンガ『キッカイくん (Kikkai-kun)』を離れて、ドクター・ポチ (Dr. Pochi) とアルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世 (Alphonsus Louis Steinbeck III) は、アニメ『デビルマン (Devilman)』 [19721973テレビ朝日系列放映] やマンガ『キューティー・ハニー (Cutey Honey)』 [19731974週刊少年チャンピオン連載] にコンビを組んで登場する。それぞれの作品の主人公達の学校の教師として [後者に於いては性別さえも違えている]、だ。
この流れでいくとマンガ『けっこう仮面 (Kekkou Kamen)』 [19741978月刊少年ジャンプ連載] にも登場しそうなのだが、残念ながら、彼等の出番はない。そして、このふたりもまた、炎天下冷奴 (Entenka Hiyayakko) の [文字どおりに破壊してしまう] 破壊的な行為によって、マンガ『バイオレンスジャック (Violence Jack)』の舞台である関東平野 (Kanto Plain) の様な大地に放り出されている筈なのだが、残念ながらその作品のどこにも登場しない。逆に謂えば、あくまでもコメディ・リリーフ (Comedy Relief) としての立ち位置を喪ってはいないのだ。

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ところで、このコンビの立ち位置、まるで爆笑問題 (Bakusho Mondai) のそれとよく似ている様な気がしないでもないが、そんな事を妄想するのはぼくだけなのだろうか。勿論、太田光 (Hikari Ota) がアルフォンヌ・ルイ・シュタインベック三世 (Alphonsus Louis Steinbeck III) で、田中裕二 (Yuji Tanaka) がドクター・ポチ (Dr. Pochi) だ。決してその逆ではない。

次回は「」。

附記:
ドクター・ポチ (Dr. Pochi) がキッカイくん (Kikkai-kun) を誘拐し、身柄を拘束した挿話がある。そこで、ドクター・ポチ (Dr. Pochi) は、エドガー・アラン・ポオ (Edgar Allan Poe) の小説『陥穽と振子 (The Pit And The Pendulum)』 [1850年発表] からヒントを得て、そこに登場する振子 (The Pendulum) そっくりの拷問器具を創造し、キッカイくん (Kikkai-kun) を亡き者にせんと謀る。
エドガー・アラン・ポオ (Edgar Allan Poe) と謂う作家を知ったのも、その作品に『陥穽と振子 (The Pit And The Pendulum)』があると知ったのもこのマンガのおかげだ。決して映画『恐怖の振子 (The Pit And The Pendulum)』 [ロジャー・コーマン (Roger Corman) 監督作品 1961年制作] ではない。
ところで、揺れる振り子 (The Pendulum) の恐怖は、その後の挿話でかたちをかえて、ドクター・ポチ (Dr. Pochi) 自身の身に降りかかる。本来なならば始終、ぷらぷらと揺れている筈のそれがある日 ...。
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