2016.11.20.09.44

『ジャン=リュック・ゴダール作品集 (Bandes Originales des Films de Jean - Luc GODARD)』

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収録されているのは、よっつのジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) 映画に流れる音楽。
収録順に並べていけば、映画『勝手にしやがれ (A bout de souffle)』 [1959年制作] より4曲。
映画『気狂いピエロ (Pierrot Le Fou)』[1965年制作] より6曲。
映画『アルファビル (Alphaville, une etrange aventure de Lemmy Caution)』 [1965年制作] より5曲。
そして映画『軽蔑 (Le Mepris)』 [1963年制作] より4曲。
以上の、計19曲が収録されている。

現在では、このよっつの映画のサウンド・トラック (Sound Track) は、それぞれが独立した作品集として編まれてはいる様なのだが、本作が発売された1994年には、この19曲しか単独の音楽作品としては発表されていなかったそうだ。
その19曲を日本編集盤としてひとつの作品として収めたのが本作である。

個人的な当時の記憶から謂えば、アンナ・カリーナ (Anna Karina) 歌唱の『私の運命線 (Ma ligne de chance)』が収録されているからこそ、食指が動いた。映画『気狂いピエロ (Pierrot Le Fou)』での、往年のMGMミュージカル映画 (Metro-Goldwyn-Mayer Musical Muvies) のパロディ (Parody) の様な、あのシーンで唄われたあの曲だ。

本作品が発表された当時に公開されていたジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) 作品における音楽の位置付けを考えてみれば、このよっつの映画の音楽は、あまりにも映画音楽然としている。

当時の彼の映画における音楽とは、もはや音楽ですらない。音もしくは音響、さもなければ雑音。
音楽として創造されたそのほんの一部分、断片のみを、映画の鑑賞者は聴かされるのだ。
だからと謂って、そこで聴く事の出来るそれらを"音もしくは音響、さもなければ雑音"として断罪する事は躊躇われる。
何故ならば、外形的にはそんな形状であるのにも関わらず、それは未だに映画に於ける音楽としての特権を放棄させられてはいないからだ。

映画に於ける音楽は、そこで語られている物語に寄り添うような素振りをみせながらも、必ずしもそれに従順ではない。
何故ならば、映画に於ける音楽のその殆どは、そこで語られている物語の登場人物達には、決して聴く事の出来ぬモノだからだ。
と、綴ると、途端に反証を提出されるだろう。そしてそれは幾らでも出てきそうだ。
だけれども、列挙された反証のその殆どでは、音楽そのものも、映画の中で語られる物語の、登場人物のひとつとして機能していないだろうか。

映画は体験だけれども、その音楽は記憶だ。
今では映像そのものを所有する事も再現する事も可能ではあるけれども、かつては、映画は決して所有不可能なモノだった。
だから、ぼく達は劇場に赴いてそこでパンフレットを購入する。そしてそれを自身の体験の記録とするのだ。

映画音楽作品を購入し、それを飽きるまで浴びる様に聴くのも、それと全く同じだ。
但し、これは記録ではなくて記憶として機能する。

と同時に、ある映画音楽作家の作品群を聴き、未だ観ぬ映画へ想いを馳せる。
それもきっと、映画が体験に他ならない事の証左として挙げる事を可能とするだろう。

だが、少なくともジャン=リュック・ゴダール (Jean-Luc Godard) の作品に限っては、それは難事なのではないだろうか。
"音もしくは音響、さもなければ雑音"の様な素振りを音楽が、彼の作品で行わねばならないから、と謂うだけではない。
本作品に収録された、よっつの映画に於いても既に、なのだ。

例えば、映画『軽蔑 (Le Mepris)』。
その主題曲とも謂える『カミーユのテーマ (Theme de Camille)』を聴く。
メランコリーな主旋律は、なにかが次第に崩壊へと向かっていく、その序曲とも謂えそうな素振りをみせている。そしてその素振り故に、後に映画『カジノ (Casino)』 [マーティン・スコセッシ (Martin Scorsese) 監督作品 1995年制作] のクロージング・テーマとしても起用されている。
そんな楽曲を聴きながら、未だ観ぬ映画『軽蔑 (Le Mepris)』を妄想する。
ネット等で紹介されている幾つかの粗筋を読めば、一組の男女の、意思の疎通の困難さとそれによって生じる諍いが主題であると解る。主演はブリジット・バルドー (Brigitte Bardot) で、その曲の題名ともなっているヒロイン、カミーユ・ジャヴァル (Camille Javal) を演じる。しかも、悲劇的な結末を迎える様だ。
そんな事前情報を基に、その映画を観る。
そして知る。
事前情報は決して誤ってはいないが、そんな映画では決してない。
その映画の主役は、映画監督フリッツ・ラング (Fritz Lang) がそこで撮影しようとしている映画そのものなのだ。

幸運にも [と寿ぐ程に特権的な事件では決してないのだが]、ぼくは本作品に収録された楽曲が起用された、よっつ映画は体験しているのだけれども、だからと謂って、この作品は素直に映画そのものの記憶へと導いてはくれない。
それ故に、純粋に音楽作品として堪能しているのだけれども、とは謂うモノの、本作品に楽曲を提供した4人の音楽家へと興味を牽引する様な構成を、この作品集は形成してはいないのだった。

ものづくし(click in the world!)169. :
『ジャン=リュック・ゴダール作品集 (Bandes Originales des Films de Jean - Luc GODARD)』


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『ジャン=リュック・ゴダール作品集 (Bandes Originales des Films de Jean - Luc GODARD)』

ヌーヴェル・ヴァーグのカリスマ、ジャン=リュック・ゴダールの名作4点のオリジナル・サウンドトラックにアンナ・カリーナのヴォーカル等初CD化曲をプラスした傑作コンピレーション。ゴダール・ファン必携。
勝手にしやがれ」「軽蔑”‘」「気狂いピエロ」他収録。

"A Bout de Souffle" 「勝手にしやがれ」 / 音楽:マルシェル・ソラール
1. DUO
 デュオ (2:21)
2. LA MORT
 死 (2:06)
3. POURSUITE
 追跡 (2:20)
4. DIXIELAND
 ディキシーランド (2:40)

"Pierrot Le Fou" 「気狂いピエロ」 / 音楽:アントワーヌ・デュアメル
5. MA LIGNE DE CHANCE
 私の運命線(ヴォーカル:アンナ・カリーナ) (2:38)
6. JAMAIS JE NE T'AI DIT QUE JE T'AIMERAI TOUJOURS
 いつまでも愛するとは言わなかった(ヴォーカル:アンナ・カリーナ) (2:50)
7. FERDINAND
 フェルディナン (7:46)
8. PIERROT
 ピエロ (5:52)
9. PIERROT No. 2
 ピエロNO.2 (4:53)
10. PIERROT No. 3
 ピエロNO.3 (3:55)

"Alphaville" 「アルファビル」 / 音楽:ポール・ミスラキ
11. LA VILLE INHUMAINE
 非人間的な市外 (2:21)
12. VALSE TRISTE
 悲しきワルツ (2:04)
13. THEME D' AMOUR
 愛のテーマ(1:36)
14. LA VILLE DETRAQUEE
 混乱する街 (1:36)
15. FINAL REPRISE DU THEME D' AMOUR
 フィナーレ:愛のテーマ (2:12)

"La Mepris" 「軽蔑”‘」 / 音楽:ジョルジュ・ドルリュー
16. THEME DE CAMILLE
 カミーユのテーマ (2:30)
17. GENERIQUE
 メイン・タイトル (2:09)
18. LA RUPTURE CHEZ PROKOCH
 プロコシェ家での仲違い (2:56)
19. CAPRI
 カプリ(1:46)

(Total 57:07) 5. 11. 15. MONO

This compilation (P) 1994 BMG Victor, Inc.
Art Direction by Eiji YAMADA (Pool Inc.), Shigeharu YAMAUCHI (tin-tak corporation)
Design by Sugio HINUMA (tin-tak corpolation)

解説:小西康陽ピチカート・ファイヴ
対訳:武者小路真理恵

尚、CDクレジットには反映されていないが、小西康陽 (Yasuharu Konishi) の解説には企画者として海老名孝 (Takashi Ebina) の名が挙げられ謝辞が綴られている。
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