2016.10.14.10.22

Overdrive

その子供はたったひとりだ。
だだっぴろい部屋の一角で、さっきからスロット・カーであそんでいる。

くろいいたが複雑な円弧をえがいてサーキット・コースをかたちづくっている。
レーンはふたつあって、ひとつはその子供が操作する。
本来ならば、あいているもうひとつのレーンは彼の友人のためのはずだが、ここにはそんな人物はみあたらない。

設定さえすれば、あいているレーンに自走式のモデルをはしらせることもできるし、それと競争することもできるはずだが、彼にはむずかしすぎるのだろう。
それとも、はなっからあきらめているのだろうか。
さっきからヘアピン・カーヴで失速ばかりしている。

けっしておおきくはないコース、しかも子供向けだ。難易度はけっしてたかくない。
それでも、全速力では完走できない。時には、減速しなければならない場所もある。
だが、その子供にはそんな発想は無理なのかもしれない。フル・スロットルのまま、かけぬけることしか念頭にない。
ハンドルだけをあやつればいい、そうおもいこんでいるようなのだ。

だから、いつも、そのへアピン・カーヴでおおきくそとへととびだしてしまう。何度こころみてもおなじだ。

たとえば添付された解説書をよめば、自身のあやまりはたちどころにわかる。
さもなければ、現時点のコース設定をあらためてもよい。コースの難易度をもっとさげるのだ。
しかし、それはきっと大人のかんがえなのだろう。

その子供は完走をあきらめたのだ。
いやちがう。ほかのあそびをおもいついたのだ。

失速してとびだしたモデルのある場所に目印をおく。
そして、もう一度、全速力で失速させてその着地点にべつの目印をおく。
そしてそして。

つまり、そうやって、失速したモデルの飛距離をきそいはじめたのである。

それはもう、スロット・レースというあそびではけっしてなかったが、彼にとっては魅力のあるあたらしいこころみではあったのだ。

[the text inspired from the song "Overdrive" from the album "Because I Can" by Katy Rose]

images
the single for the song "Overdrive" by Katy Rose

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