2016.07.17.10.42

『唯 (HAI)』 by キャバレー・ボルテール (CABARET VOLTAIRE)

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一体、誰の背中なんだろう。
この作品を掌にするたびに思う。

本作品が日本 (Japan) で収録された数少ない証の様な顔をして、アルバム・ジャケットにはひとりの力士 (Sumo Wrestler) の背中が映し出されている。きっと、収録された当日、会場であるツバキ・ハウス (Tsubaki Hause) に映し出された映像のひとつなのだろう。

キャバレー・ボルテール (Cabaret Voltaire) は当時、この種のジャンルとしては珍しく、リアル・タイムで聴く事の出来た数少ないバンド、アーティストのひとつだ。それはきちんと国内盤が発売されていたからである。
しかもその上、来日公演も行われて、その音源も収録されて、この様に発売された。

バンド自体の歴史からみれば、音楽的な方向性が変化していく時季で、この間、クリス・ワトソン (Chris Watson) が脱退し、3人体制から、リチャード・H・カーク (Richard H Kirk) とスティーブン・マリンダー (Stephen Mallinder) の2人体制へと移行していく。
現時点からみれば、バンドの歴史は2人体制になってからの方が長く、クリス・ワトソン (Chris Watson) 在籍時はごく初期の時代と看做されてしまう。

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彼等が時に、批難がましく語られてしまうのは、ひとつにはそのバンド名に責任の一端があると思われる。
キャバレー・ヴォルテール (Cabaret Voltaire) とは謂うまでもなく、チューリッヒ・ダダ (Zurich Dada) の拠点であって、しかも、彼等の作品は、どこからどうみてもダダ (Dada) 的ではない。もっと構築的で、時にとても古典的な佇まいすらも感じてしまう。
チューリッヒ・ダダ (Zurich Dada) のキャバレー・ヴォルテール (Cabaret Voltaire) ではなくて、百科全書派 (Collaborateurs de l'Encyclopedie) のヴォルテール (Voltaire) が運営するキャバレー (Cabaret)、そんな感慨もなくはないのだ。
[上掲画像は『キャバレー・ヴォルテールで音響詩を朗読するフーゴ・バル(Hugo Ball At The Cabaret Voltaire, With 1917 Sound-poem)』 [左 : 猶、こちらも参照の事] と『哲学者達の夕餉 (Le Diner des philosophes』 [右:ジャン・フーバー (Jean Huber) 画 17721773年制作 : こちらによれば、席上、挙手をしているのがヴォルテール (Voltaire) らしい。]

この作品ではアラン・フィッシュ (Alan Fish) を正式メンバーとして迎え入れた直後で、作品を手にいれたその時点で初めて、メンバー・チェンジがあった事を知って、ぼくは吃驚してしまう [ぼくが上京する前に収録、発売された]。

バンドの方向性もどんどん変化していく一方で、聴き手であるぼくの嗜好 / 指向もどんどん変わる。
だから、本作品の発表以降の動向は、殆ど抑えていない。

にも関わらずに、キャバレー・ボルテール (Cabaret Voltaire) は不意にぼくの前に顕れる。
アル・ジュールゲンセン (Al Jourgensen) / ミニストリー (Ministry) を起点としたバンド群は、ぼくにキャバレー・ボルテール (Cabaret Voltaire) を思い起こさせるに充分だった。
テクノ (Techno) に分類されるワープ・レコーズ (Warp Records) の、重要人物のひとりとして、リチャード・H・カーク (Richard H Kirk) の名をみいだした際は、混乱すると同時に逆に、ぼくが納得せざるを得ないモノがそこにあった。

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今でも不意に、『スリー・マントラス (Three Mantras EP)』 [1980年発表] のふたつのビートが脳裏を掠める。
切迫感しかない『ウエスタン・マントラ (Western Mantra)』のビートと、呪縛の様な『イースタン・マントラ (Eastern Mantra)』のビートがせめぎあい、ぼくはいつも立ち往生してしまう。

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初めて手にした彼等の作品は、『ヴォイス・オヴ・アメリカ (The Voice Of America)』 [1980年発表] だが、これは未だに好きではない。
2 x 45 (2 x 45)』 [1982年発表] に収録された『ヤシャー (Yashar)』が一番、好きな作品なのだろうけれども、それは彼等の一部分でしかない。

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本作品が発表される2年前にはライヴ盤『ライヴ・アット・ザ・YMCA (Live At The Y.M.C.A.)』 [1980年発表] が発表されているが、それとは全く手触りが違う。
だが、バンド創生メンバーのクリス・ワトソン (Chris Watson) の存在 / 不在、それだけが原因ではないと思う。
1979年発表のシングル『ナグ・ナグ・ナグ (Nag Nag Nag)』 [アルバム『#7885 エレクトロパンク・トゥ・テクノ・ポップ (#7885 [Electropunk To Technopop 1978-1985])』 [2014年発表] 収録] は、編成こそ通常のバンド編成とは違えているが、今の耳で聴けばパンク (Punk) としか謂い様がない。つまり、どんどんとバンドが変化しているのだ。
ここまでに登場した幾つもの作品の発表年をみれば、それを裏付けられるだろう。

本作品が日本 (Japan) の、東京 (Tokyo) の、収録作品である証は、アルバム・カヴァーを飾った力士 (Sumo Wrestler) の背中の他に、曲間に浮遊する日本語のナレーションと、演奏直前の観客の怒号、演奏終了後の会場アナウンス、そしてアルバム・クレジット。
だけれども、それらもまた、このバンドの方向性を考えれば、他所で他者が収録した音源を許にコラージュしたモノなのかもしれず、確かなモノはひとつとしてない。
と、断定する事もまた可能だ。

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ただ、『タクシー・ミュージック (Taxi Music)』の小刻みに揺れるビートはその後、東京 (Tokyo) で暮らし始めたぼくにはすごく馴染むモノがあるのも、事実だ。
後に、正式なスタジオ・レコーディング作品[『ジョニー・エスノ : オリジナル・サウンド・トラック (Johnny Yesno : The Original Soundtrack From The Motion Picture)』 [1983年発表] 収録]として発表されている音源よりも、本作品でのスカスカしたビートの躍動感はとても心地よいのだ。
首都高 (Shuto Expressway) の渋滞にはまって身動き出来ない最中に、クラフトワーク (Kraftwerk) の『アウトバーン (Autobahn)』 [アルバム『アウトバーン (Autobahn)』 [1974年発表]] を聴かされているよりもずっといい。

ものづくし(click in the world!)165. :
『唯 (HAI)』 by キャバレー・ボルテール (CABARET VOLTAIRE)


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唯 (HAI)』 by キャバレー・ボルテール (CABARET VOLTAIRE)


1. ウォールズ・オブ・キョート
 WALLS OF KYOTO 7'18"
2. 3 デイズ・モンク
 3 DAYS MONK 6'16"
3. ヤシャー [ヴァージョン]
 YASHAR [Version] 7'46"

1. オーバー・アンド・オーバー
 OVER & OVER 4'43"
2. ディスコノ
 DISKONO 6'45"
3. タクシー・ミュージック [ヴァージョン]
 TAXI MUSIC [Version] 10'47"

words, music & arranged by CABARET VOLTAIRE
from 2nd stage at TSUBAKI HOUSE, TOKYO Japan. March 23rd 1982
(C) ROUGH TRADE MUSIC

MUSICIANS ;
STEPHEN "knapsack" MALLINDER
Vocals, Bass Guitar
RICHARD "bourbon" KIRK
Guitar, Clarinet, Synthesizer, Tapes
ALAN "raw" FISH
Drums, Percussion

LYN "screen" CLARK
Slides Projector

PRODUCED BY CABARET VOLTAIRE
DIRECTED BY Mama NOE SERIZAWA
Papa ARIMASA OIKAWA (assistant)

RECORDED AT TSUBAKI HOUSE, Tokyo, March 23rd 1982
ENGINNEER ; Pokari SASAKI, Ponta II ISHIBASHI
       PETER "margarita" WALMSLEY

FRONT COVER PHOTO BY RICHARD KIRK
BACK VIDEO PHOTO BY CHUTAROU MOGI
SLEEVE LAYOUT BY G HOUSE

THANKS TO YUKO TAKANO MAYUMI YOSHIDA PETER BARAKAN Melody House (Mr. KATAGIRI, Amaguri IZUTSU, Mantis IMAOKA, Nutty YAMADA) S.C.L

PRODUCTION CO-ORDINATED BY JAPAN RECORDS INC.

ぼくの所有している日本盤LP添付のライナー・ノーツには、来日公演とレコード制作を含む彼等の滞日記 [無署名] が掲載されていて、YOUSHI ITOKAWA撮影による写真数点とオフの写真1点 [これのみフォト・クレジットはMayumi] が掲載されている。

猶、下に掲載するのは、その日本盤ライナー・ノーツに掲載されていた、作品名『唯 [Hai]』の解説 [?] である。

hai<唯>
1. opposite mean : No
2. certainly, present, consent, assent, approval
3. answer, reply, respond
4. a voice when people hold up the hand
5. urge the way for horse

●The follows chinese characters are read HAI too.

灰:ash(es), cinders
蠅:fly (insect)
拝:a salutation, a salute
杯:a cup, a glass
肺:the lungs
背:back, back side
牌:a notice board, a signboard, medal
配:distribute, a match, a spouse, exile, distribution, rationing
敗:lose opposite meaning : win
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