2016.06.28.10.29

とどら

「ホントは『206便消滅す』も怪獣の出ない話でやってみたかった。わたしもね、怪獣を出さないように話しあったんですけど」
[『梶田興治に聞く』ヤマダマサミ (Masami Yamada) 著『ウルトラQ伝説 (The Legend Of Ultra Q)』 [1998年刊行] より]

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四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) は、TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966TBS系列放映] の第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』 [監督:梶田興治 (Koji Kajita) 脚本:山浦弘靖 (Hiroyasu Yamaura)、金城哲夫 (Tetsuo Kinjo) 原案:熊谷健 (Ken Kumagai) 特技監督:川上景司 (Keiji Kawakami)] に登場する。
飛行機の墓場とも目される、日本上空にある異次元空間に棲んでいる。そして、その異空間に紛れ込んでしまった飛行機とその搭乗員達を襲うのだ。
物語は、当番組の主人公達である、万城目淳 (Jun Manjome) [演:佐原健二 (Kenji Sahara) と戸川一平 (Ippei Togawa) [演:西條康彦 (Yasuhiko Saijo)] が搭乗した超音速ジェット旅客機 (SST : Supersonic Transport) 206便 (Flight 206) の、異次元空間との邂逅とそこからの脱出劇を描いたモノである。

だから、四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) の果たす役割は作劇上、その脱出劇の緊迫感を煽る為に登場したのにすぎず、逆に考えれば、必ずしもそこに、四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) 登場の必然性はない。
実際に、本作品の準備稿でも四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) は登場しない。

と、謂う様な事柄を踏まえて、冒頭に引用した本作品の監督、梶田興治 (Koji Kajita) の発言を読んでみると、とても味わい深い。

と謂う様に綴ってしまって、制作に携わった人物の証言がある事で以って、総て良しとして一件落着させてしまうのは簡単だ。
だけれども、もう少し、この件に拘泥してみるのもまた一興ではないだろうか。
つまり、何故、そこに四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) が必要であったのか。そしてまた、何故、四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) がそこに顕れたのか。

怪獣 (Kaiju) を出したい、もしくは、怪獣 (Kaiju) を出して欲しい、さらに謂えば、怪獣 (Kaiju) を出さねばならぬ、と謂う様な要請の様な、命令の様なモノが何故、当時、存在していていたかは、番組の性質とその番組を視聴した層とを考えれば良く解る。
この番組枠は当初、SF特撮番組『アンバランス (Unbalance)』として企画されていて、怪獣 (Kaiju) はその番組シリーズを支える為の1要素にしか過ぎなかったのだ。『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』もその1挿話として企画、脚本化されていった。
しかし、それが怪獣 (Kaiju) 登場を主眼とするTV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』へと企画そのものが変更されていくのである。
206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』は、そんな企画変更の煽りを真正面から被った作品と看做す事も可能だ。

と、同時に、第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』は、TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』放映時の最終話にあたり、この挿話放送の翌々週にはTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967TBS系列放映] の放映が開始する。
で、あるのならば怪獣 (Kaiju) が登場する挿話は必要とされるであろうし、しかもそれと同時に、第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』の存在によって、TV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』とTV番組『ウルトラマン (Ultraman)』の間に大きな断絶を演出する事が出来る。
何故ならば、第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』での、這々の態で四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) からの逃亡しか成し得なかった主人公達に比して、TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』では怪獣達 (Kaijus) へ真っ向から挑む、科学特捜隊 (The Science Special Search Party) もウルトラマン (Ultraman) も登場するからなのだ。
つまり、第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』で感じた不満や不安があるからこその、TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』への期待がそこで培われるのだ。

歌詞にもある。
怪獣退治の専門家♪ [『ウルトラマンの歌 (Song For Ultraman)』 [作詞:東京一 (Hajime Tsuburaya aka Kyouichi Azuma 作曲:宮内國郎 (Kunio Miyauchi) 歌唱:みすず児童合唱団 (Misuzu Children's Choir)、コーロ・ステルラ (Coro Stella)] と。
TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』にあってTV番組『ウルトラQ (Ultra Q)』にないモノがこれである。

では、何故、そんな物語に登場したのが四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) なのだろうか。
第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』の脚本では「オオアザラシ」=海豹 (Earless Seal) とされていて、外見上はその口腔にある1対の牙から海象 (Walrus) を連想させて、その名称が海馬 (Steller Sea Lion) を捻った四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora)。
海豹 (Earless Seal) なのか海象 (Walrus) なのか海馬 (Steller Sea Lion) なのか、それを確認するには四肢の状態を観るのが一番手っ取り早いのだけれども、彼の棲まう4次元空間ではもうもうと立ち込める白煙でそれも定かではない。
第一に、日本の上空に何故、海豹 (Earless Seal) とも海象 (Walrus) とも海馬 (Steller Sea Lion) とも看做す事が可能な、海獣 (Marine Animal) めいた怪獣 (Kaiju) が棲息しているのだろうか。
そして、これを以って、第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』に四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) 登場の必然性を疑う最有力説の根拠になっているのでもある。

いや、だからと謂って、陸棲動物 (Land Animal) たる (Leopard) とか (Elephant) とか (Horse) が登場しても、疑義そのものは変わらない。
結局のところ、その物語に怪獣 (Kaiju) が登場する必然性はどこにあるのだろう、と謂う疑問に横着してしまうのだ。

実は、四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) は映画『妖星ゴラス (Gorath)』[本多猪四郎 (Ishiro Honda) 監督作品 1962年制作] に登場した南極怪獣マグマ (Maguma) の着ぐるみの改造である。
差異は、体色の着色が異なるとされているが第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』がモノクロ放映であるが為、それを確認するのは至難だ。むしろ、両者の瞳の虹彩 (Iris) の有無ではないだろうか。南極怪獣マグマ (Maguma) のそれは白濁していかにも悪役然とした風貌である一方で、四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) のそれは生物然とした輝きを放っている。

そして、四次元怪獣トドラ (Four-dimensional Monster Todora) の原典でもある南極怪獣マグマ (Maguma) も、ひとつの脱出劇の緊迫感を煽る為にのみ登場するのだ。
この映画『妖星ゴラス (Gorath)』は、地球 (The Erath) と妖星ゴラス (Gorath) との衝突を回避する為に、全人類が総力を結集して南極大陸 (Antarctica) に巨大なロケットエンジン (Rocket Engine) を設置して地球 (The Erath) そのものをノアの方舟 (Noah's Ark) と化さしめて、地球 (The Erath) の軌道を変更、妖星ゴラス (Gorath) との衝突を回避させようとする、空前絶後の作品。
南極怪獣マグマ (Maguma) は、その巨大なロケットエンジン (Rocket Engine) 建設現場に登場して人類の企てを阻止するかたちとなって、太古の眠りから覚醒めるのだ。
だから、この映画に於いても、南極怪獣マグマ (Maguma) 登場の必然性は、ある人々から疑義を持たれているのである。
その作品の監督である本多猪四郎 (Ishiro Honda) も、怪獣 (Kaiju) 登場の要請には抵抗したと謂う。

次回は「」。

附記 1. :
第27話『206便消滅す (The Disappearance Of Flight 206)』に関してはひとつ、興味深い制作秘話があるのでそれを紹介しよう。
「飛行機がきりもみになって落ちてくるシーンがあるでしょう。それを特撮スタッフができなかったんですよ。そしたら、円谷さんが『そんなのおまえなぁ』って。何をいうのかと思ったら、洗濯機に水を入れて回すわけですよ。その中に飛行機をポンと突っ込んだ。それが、乱気流に呑まれる、あの絵の素になるんですよ」
[『佐原健二に聞く』ヤマダマサミ (Masami Yamada) 著『ウルトラQ伝説 (The Legend Of Ultra Q)』 [1998年刊行] より]

附記 2.:
そして記事冒頭に掲載した写真が、「乱気流に呑まれる、あの絵」である [掲載画像はこちらから]。
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