2016.06.19.10.35

"Live!" by Carla Bley

images
この作品をかけるたびに疑問がわく。
ぼくが聴きたかったのは果たして、この作品だろうか、と。

カーラ・ブレイ (Carla Bley) 名義の作品で手許にあるのは本作品しかない筈だから、間違えようもない。
だけれども、彼女のきらびやかな経歴とその過程に発表した幾つもの作品をおもいかえせば、およそ、らしからぬ作品ではある。

ぼくの念頭にあるのは例えば、チャーリー・ヘイデン (Charlie Haden) 名義のアルバム『リベレーション・ミュージック・オーケストラ (Liberation Music Orchestra)』 [1969年発表] の事だ。彼女はその作品で作曲 (Compose) と編曲 (Arrangement) をてがけている。

彼女もチャーリー・ヘイデン (Charlie Haden) もフリー・ジャズ (Free Jazz) の渦中から擡頭してきたアーティストであって、そのフリー・ジャズ (Free Jazz) の定義に従えば、そこでの作曲 (Composition) と編曲 (Arrangment) と謂う作業の重要度は、他のジャンルの音楽とは随分と異なっている様に思える。
単純に謂えば、フリー・ジャズ (Free Jazz) と謂う文脈に於いては、演奏者 (Performer) がそのまま作曲家 (Composer) であると同時に、演奏 (Performance) の最中で行う行為が編曲 (Arrangement) そのものだ。逆に謂うと、演奏者 (Performer) とは離れた場所に於いて、作曲家 (Composer) や編曲家 (Arranger) は存在出来ないし、もし仮に、いたとしてもその意義は極めて小さいモノになると考えられる。

images
にも関わらずに、少なくともそのアルバムに於いて、彼女はリーダーであるチャーリー・ヘイデン (Charlie Haden) と対等、もしくはそれ以上の存在としてその作品の中に君臨している [アルバム・ジャケットに於いて、作品名でもあるリベレーション・ミュージック・オーケストラ (Liberation Music Orchestra) の旗を両サイドで掲げているのが、彼女 [左端] とチャーリー・ヘイデン (Charlie Haden) [右端]だ]。

そして、彼女の作品と彼女の経歴を追っていくと、絶えず彼女はそんなアンビヴァレンツ (Ambivalent) な場所にいる様に、ぼくには思える。

imagesimages
近年の、スティーヴ・スワロウ (Steve Swallow) とのデュオ作品は、明らかにそうだ。
アルバム・ジャケットに登場する彼と彼女の佇まいから、浮かぶことばは"老いらくの恋 (Love In Old Age)"以外の何物でもないし、ふたりのパートナー・シップはそう表現するのになんの衒いも必要ではない。
しかし、そんな手垢にまみれた言辞にほだされて、いざ作品に向かうと吃驚してしまう。
ミュージシャンとしてのふたりの交歓は、緻密で緊張感に満ちたモノですらあるのだ。
いや、もしかするとぼく自身が"老いらくの恋 (Love In Old Age)"と謂うモノを誤解しているのではないか、そんな思いにすらも至らせてしまう。冷静に考えれば、エロス (Eros) とタナトス (Thanatos) は、もしかしたらぼく達以上に、彼等の極めて間近にあるのだ。
[上掲画像は『デュエット (Duets)』 [1988年発表:左] と『ゴー・トゥゲザー (Go Together)』 [1993年発表:右]]

と、謂う様な点を踏まえて本作『ライヴ! (Live!)』を聴く。
流れてくるのは、フュージョン (Jazz Fusion) 風味のビッグ・バンド・サウンド (Sounds Of Big Band) だ。1982年発表と謂う点を踏まえれば、当時の最先端と謂うよりも、幾らか遅れて登場している様な気配がする。
才気走った感性の発露と謂うよりも、今、ここにいる彼女を含めた10人のメンバーで、如何様な色彩を紡ぎ出せるのか、そんな彼女の関心が最優先されている様にも思える。

だから、この作品を契機に、カーラ・ブレイ (Carla Bley) と謂うアーティストへ関心や興味が触発される事よりも、同じ編成で、他のアーティストはどんな試みを企てているのかと謂う方向へと、ぼくは触発される。
彼女の別の時代の別な作品ではなくて、だ。

imagesimages
だけれども例えばそこで、ギル・エヴァンス (Gil Evans) を思い起こしてしまうと、初期の緻密な作品群に向かえばいいのか、晩年の奔放極まるマンデイ・ナイト・オーケストラ (The Monday Night Orchestra) 作品が相応しいのか、悩んでしまう。
そおいう意味でも、本作品はふたつに引き裂かれるのだ。
一体、どこもまでもが彼女の掌中にあるのか、それとも、どこからを9人のメンバーに委ねてしまっているのか、と。
[上掲画像は『ギル・エヴァンス・アンド・テン (Gil Evans And Ten)』 [1957年発表:左] と『バド・アンド・バード (Bud And Bird)』 [1993年発表:右]]

以下、余談。
1982年の本作品発表時、本作品の邦題は『艶奏会 (Live!)』と謂うものだった。
その言葉とカーラ・ブレイ (Carla Bley) をフィーチャリングしたヴィジュアル・ワークで、鼻面を伸ばした様な紹介文ばかりが登場した。それは表面的な聴きやすさも影響したのだろう。
だけれども、いいかい。
アルバム・ジャケットに開花しているのは、彼女の女性性ばかりではない。爪先立ちした両脚は、男性器の暗喩でもあるのだよ。
しかも、女性性の発露である胸部も下腹部も隠されている事を思えば、両性具有者 (Androgynous or Hermaphrodite) 的と把らえるよりも、男性性の方が強調されていると看做す事すら可能なのだ。

ものづくし(click in the world!)164. :"Live!" by Carla Bley


images
"Live!" by Carla Bley

THE CARLA BLEY BAND

MICHAEL MANTLER TRUMPET
STEVE SLAGLE ALTO AND SOPRANO SAXOPHONES, FLUTE
TONY DAGRADI TENOR SAXOPHONE
GARY VALENTE TROMBONE
VINCENT CHANCEY FRENCH HORN
EARL McINTYRE TUBA, BASS TROMBONE (solo on BLUNT OBJECT)
CARLA BLEY ORGAN GLOCKENSPIEL PIANO (on TIME AND US ONLY)
ARTURO O'FARRILL PIANO ORGAN (on TIME AND US ONLY)
STEVE SWALLOW BASS
D. SHARPE DRUMS

1. BLUNT OBJECT 5:10
2. THE LORD IS LISTENIN' TO YA, HALLELUJAH! 7:24
3. TIME AND US 7:56
4. STILL IN THE ROOM 9:06
5. REAL LIFE HITS 4:26
6. SONG SUNG LONG 7:30

ALL COMPOSITIONS BY CARLA BLEY
PUBLISHED BY ALRAC MUSIC (BMI)

RECORDED AUGUST 19 - 21, 1981 AT THE GREAT AMERICAN MUSIC HALL,
SAN FRANCISCO, CALIFORNIA, BY PHIL EDWARDS RECORDING
ENGINEER : RON DAVIS, ASSISTED BY BILL STEELE AND PHIL DeLANCIE
CONCERT SOUND : SVEN PERSSON
MIXED DECEMBER 1981 AT GROG KILL STUDIO, WILLOW, NEW YORK
ENGINEER : TOM MARK
PHOTOGRAPHS : ROGER RESSMEYER
CALLIGRAPHY : DAVID BRIER
ALBUM DESIGN : WATT
ART DIRECTION : PAUL McDONOUGH
PUBLISHER : ALRAC MUSIC (BMI)
KORG BX-3 ORGAN COUTESY UNICORD
TONY DAGRADI COURTESY GRAMAVISION RECORDS

PRODUCED BY CARLA BLEY

A WATT PRODUCTION
(C) (P) 1982 WATT WORKS, INC. / ECM RECORDS GMBH
関連記事

theme : おすすめ音楽♪ - genre : 音楽

adventures of t. g. chaung | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

http://tai4oyo.blog108.fc2.com/tb.php/2045-f29d38fa

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here