2016.04.19.12.36

きけろのじょー

特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』 [1967東映東京制作 TBS系列放映] は、約半年間に及ぶ放送期間を単純に、前後篇の2部作としてみる事が可能だ。前半の3か月間、第1話から第12話までは太陽系 (Solar System) 侵略を目論むバンデル星人 (Alien Bandel) との闘いを描く『バンデル星人篇 (Alien Bandel Series)』であり、遺りの3か月間、第13話から第24話までは毎回登場する新怪獣との闘いを描く『怪獣ぞくぞく篇 (Monsters One After Another)』だ。

拙稿の表題に掲げたキケロのジョー (Joe From Planet Kikero) は『バンデル星人篇 (Alien Bandel Series)』だけに登場する異星人 (Alien)、小林稔侍 (Nenji Kobayashi) が演じた。そして、彼こそが特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』と謂う物語の、路線変更の煽りを物の見事に受けてしまった、と謂う事が可能なのだ。

その番組に登場し、物語の主人公であるキャプテン・ウルトラ (Captain Ultra) [演:中田博久 (Hirohisa Nakata)] 達が駆使する最新鋭機シュピーゲル号 (Spiegel) は、3機に分離合体する事が可能で、キケロのジョー (Joe From Planet Kikero) は、その1機の操縦士たる役割を任じている。つまり、物語の最重要登場人物である3名の一翼を彼が担っているのである。
尚、遺りの2機は、主人公であるキャプテン・ウルトラ (Captain Ultra) とロボットのハック (Huck The Robbot) [演:佐川二郎 (Jiro Sagawa)] が操縦している。
同じ事をもう一度繰り返す事になるが、キャプテン・ウルトラ (Captain Ultra) とロボットのハック (Huck The Robbot) とキケロのジョー (Joe From Planet Kikero) が、最新鋭機シュピーゲル号 (Spiegel) の操縦士であり、彼らの活躍を描くのが特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』なのである。

しかも、そんな重要な位置にあるキケロのジョー (Joe From Planet Kikero) が途中降板する物語、それが特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』なのである。
その事情を綴るのは簡単な事なのだけれども、もう少し、状況を整理してみよう。

物語は所謂、典型的なスペース・オペラ (Space Opera) である。
主人公は、地球人 (Earthling) であり、しかも日本人 (Japanese) であるキャプテン・ウルトラこと本郷武彦 (Takehiko Hongo aka Captain Ultra)。その両脇を支えるのが、異星人 (Alien) とロボット (Robot)。決してこの三角形は間違えてはいない。現に、本作品の原案とも謂えるSF小説シリーズ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』 [作:エドモンド・ハミルトン (Edmond Hamilton) 19401951年発表] での登場人物達の相関関係をみてみれば、その作品に於けるオットー (Otho) とも謂うべきポジションだ。

余談だけれども、特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』とSF小説シリーズ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』との、それぞれにおける登場人物の相関関係を精査してみれば、違いは生ける頭脳 (Brain Living)、サイモン・ライト (Simon Wright) の存在の有無だけの様な気がする。
さらに余談を重ねれば、SF小説シリーズ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』を画像検索すると、出てくるのは日本放送協会 (NHK : Japan Broadcasting Corporation) 制作放映のテレビ・アニメ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』[19781979年放映] ばかりなのだ。古式ゆかしいパルプ・マガジン (Pulp Magazine) でのそれは忘却に付されて、今やあのアニメ作品がSF小説シリーズ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』のヴィジュアル・アイコンとなっているのだ。

そんな余談に次ぐ余談はともかくにしても、それ程に、特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』はSF小説シリーズ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』を換骨奪胎した物語であると謂う事も可能なのだが、それをもって粗探しをする事が拙稿の趣旨ではない。
ここでは単純に、スペース・オペラ (Space Opera) と謂う物語の枠組みの中に於いて、異星人たるキケロのジョー (Joe From Planet Kikero) の存立基盤は決して損なわれているのではない、と任じておけば充分だ。むしろ、彼の様な登場人物を必須とするのが、スペース・オペラ (Space Opera) だ [こちらも参照の事]。

SF小説シリーズ『キャプテン・フューチャー (Captain Future)』に許されていて、特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』に許されない、物語の構造と謂うモノがここにあるのだろうか。そしてそれが、キケロのジョー (Joe From Planet Kikero) を途中降板させる事になったのだろうか。

ここで、この番組と同時期に放映されていた特撮TV番組『仮面の忍者 赤影 (Kamen no Ninja Aka-Kage : Red Shadow)』[原作:横山光輝 (Mitsuteru Yokoyama) 19671968関西テレビ放送系列放映] をみてみよう。この作品は、東映京都 (Toei Studios Kyoto) の制作作品なのである。
この物語では、3人の忍者 (Ninja)、赤影 (Akakage : Red Shadow) [演:坂口祐三郎 (Yuzaburo Sakaguchi)]、青影 (Aokage : Blue Shadow) [演:金子吉延 (Yoshinobu Kaneko)]、白影 (shirokage : White Shadow) [演:牧冬吉 (Huyukichi Maki)] の3名が主たる登場人物であり、この3名によるトリオ編成は最初から最期まで維持される。だから、TV番組のドラマツルギー (Dramaturgy) として3名のチーム編成と謂う構造が決して無謀なモノではないと謂う事も可能だ。
にも関わらず、特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』はその構図が決壊してしまうのである。

その理由の殆どは、キケロのジョー (Joe From Planet Kikero) の不人気を挙げている。
番組の人気梃入れを模索する中で、『バンデル星人篇 (Alien Bandel Series)』から『怪獣ぞくぞく篇 (Monsters One After Another)』への移行と合わせて、その役の馘首を謀ったと看做されているのである。

images
そうなのかなぁ? リアル・タイムでこの番組を体験していたモノとしては、あまりそんな実感はないのだけれども?
物語の構図としては、キャプテン・ウルトラ (Captain Ultra) とキケロのジョー (Joe From Planet Kikero) とロボットのハック (Huck The Robbot) のトリオは盤石なモノに思えていたし、しかも、物語の後半、キケロのジョー (Joe From Planet Kikero) の不在の、シュピーゲル号 (Spiegel) の操縦席に収まったアカネ隊員 (Akane) [演:城野ゆき (Yuki Jono)]が、新しい三角形の魅力を築き得たのかと謂うとそれも疑問なのだ。現在の視点でみれば、彼女の魅力は、もうすこし違ったところで輝いている様にも思えるのだが。
[掲載画像はこちらより:アカネ隊員 (Akane) とバンデル星人 (Alien Bandel)]

不人気の理由として考えられるのは、こうだ。
マンガ『オバケのQ太郎 (Obake No Q-Tarou』 [作:藤子不二雄 (Fujiko Fujio) 19641966週刊少年サンデー連載] の発端が忍者 (Ninja) ごっこである様に、当時の少年達がキャプテン・ウルトラ (Captain Ultra) ごっこを試みるとする。そうすると、割を喰らうのがキケロのジョー (Joe From Planet Kikero) なのではないか。つまり、彼が物語の中で披露する彼の特技を、生身のぼく達が決して真似出来ない、と謂う様な。
主役であるキャプテン・ウルトラ (Captain Ultra) に扮する事も、その敵役であるバンデル星人 (Alien Bandel) に扮する事も、想像力の及ぶ限りに於いて、可能なのだ。例えば、ロボットのハック (Huck The Robbot) に扮するには、彼の名台詞「ホンニョゴニョン (Hon-nyugo-nyon)」を絶えず発していればいい。だが、キケロのジョー (Joe From Planet Kikero) 自身には、それに匹敵する様な必殺の名台詞がなかった。彼に不人気という致命傷を与えたのは、おそらく、そんな理由なのだろう。

敢えて綴れば、コメディ・リリーフは1人 [1体] で充分だと謂う認識もあったのかもしれない。物語の中で随時、キケロのジョー (Joe From Planet Kikero) とロボットのハック (Huck The Robbot) は凸凹コンビ (Odd Couple) ぶりを発揮していたのだが、それは必ずしもこのコンビでなければ描ききれないモノでもない。

次回は「」。

附記:
特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』は、『ウルトラシリーズ (Ultra Series)』第3弾。前番組は『ウルトラマン (Ultraman)』 [19661967TBS系列放映] である。要は、この時間帯の番組は円谷プロ (Tsuburaya Production) が制作していたが、制作日程の逼迫を受けて、急遽、その穴を埋める様な形で東映東京 (Toei Tokyo Movie Studios) が制作を請け負ったのである。
従って、良くも悪くも前々作と前作の特撮TV番組である『ウルトラQ (Ultra Q)』 [1966TBS系列放映] 〜『ウルトラマン (Ultraman)』との対比で凝視められ続ける事になる。
先行の円谷プロ (Tsuburaya Production) 2作品と一線を画す為に試みられたのが、スペース・オペラ (Space Opera) と謂うジャンルの選別であるのと同様に、『ウルトラQ (Ultra Q)』〜『ウルトラマン (Ultraman)』と同等ないしはそれ以上の人気と視聴率を求められた結果、選ばれた選択肢が『怪獣ぞくぞく篇 (Monsters One After Another)』であるのだ。
現在のTV番組では常道である、毎回毎回、新しい敵が顕れて、毎回毎回、その新しい敵が退治される物語構成の先鞭となったのが、円谷プロ (Tsuburaya Production) の『ウルトラシリーズ (Ultra Series)』だ。
それまでの番組の殆どは、1か月くらいの時間と放映回をかけて、物語が語られていた。それは映画界で行われていた連続活劇 (Serial Film) に準じた発想だ。そんなあり方を否定したのが円谷プロ (Tsuburaya Production) の『ウルトラシリーズ (Ultra Series)』とも謂える。
同時期に放映されていた特撮TV番組の殆どが連続活劇 (Serial Film) に準じている。上で言及した特撮TV番組『仮面の忍者 赤影 (Kamen no Ninja Aka-Kage : Red Shadow)』も勿論、そう、同じだ。そして特撮TV番組『ウルトラマン (Ultraman)』よりも13日早くカラー放映に踏み切った、と同時に円谷プロ (Tsuburaya Production) を好敵手として認知していた手塚治虫 (Tezuka Osamu) 原作の特撮TV番組『マグマ大使 (The Space Giants)』 [19661967フジテレビ系列放映] も同様だ。
だから、特撮TV番組『宇宙特撮シリーズ キャプテンウルトラ (Space Tokusatsu Series : Captain Ultra)』の『バンデル星人篇 (Alien Bandel Series)』は当時の現状を踏まえた妥当なモノであったのだが、逆にそれは既に旧いドラマツルギー (Dramaturgy) でしかない事の証左となってしまった。そう謂えるのかもしれない。
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