2016.04.17.11.26

『ヤンキース (YANKEES)』 by ジョン・ゾーン (JOHN ZORN) デレク・ベイリー (DEREK BAILEY) ジョージ・ルイス (GEORGE LEWIS)

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この作品を入手した際に、ふと想い出したのは、ラード (Lard) の第1作『ザ・パワー・オヴ・ラード (The Power Of Lard)』[1989年発表] なのだった。

本作品とその作品には、音楽的な共通点は一切ないから、上の1文を読むだけでは怪訝となるだけだろう。いや、それ以前に、ふたつの作品を共に既知とする人々がどれ程いるだろうか。そんな疑念を抱かせる程、両者の距離は甚だしく隔たっている。

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ラード (Lard) の第1作『ザ・パワー・オヴ・ラード (The Power Of Lard)』の裏ジャケットには、屋外で観戦中の人物達のモノクロ写真が掲載されている。上掲の写真、右側がそれで、その左はその裏面、つまり表ジャケットである。
その人物達の最前列には4名の中高年が座っており、観戦の昂奮の最中にある。そして、その掲載写真の直下に、4名の人物名がクレジットされている。
アル・ジュールゲンセン (Al Jourgensen)、ポール・バーカー (Paul Barker)、ジェフ・ワード (Jeff Ward)、ジェロ・ビアフラ (Jello Biafra)、つまりラード (Lard) の参加メンバー名だ。
勿論、このメンバー4名が掲載写真の4名の中高年である筈もないのだが、写真の中の人物達の配置や表情や挙動が、メンバー4名のそれとなんらかの関連性があるのではないかと邪推させる。
本来ならば、違和感を催させるべきモノが、それとは全く逆の同和感 [と、思わず造語を施してしまったが] をも抱かせるのである。

本作品のジャケット・カヴァーには、作品名の下に、野球選手 (Baseball Players) の写真3点が配置されて、その下に参加メンバー3名の名前がクレジットされている。勿論、上の野球選手 (Baseball Players) と、下のクレジットされたミュージシャンとは等号では結びつけられない。

ところで、この拙稿は、ここまで綴ってきた様に、その殆どが作品のヴィジュアル要素に言及する事だけになりそうだ。その中身、音楽的な紹介やら解析やらを期待してここまで読んできた方には、申し訳ないが、了解を願いたいところではある。

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掲載された3点の写真に撮影されている野球選手 (Baseball Players) の実名が解っていれば、そこからなにか解る事があるかもしれない。作品名に象徴されている様に、ニューヨーク・ヤンキース (New York Yankees) にかつて在籍した名選手ならば、尚の事だ。
そこで、各写真をトリミングして、それぞれを画像検索しても、なんの手がかりも得られない。出てくるのは、本作品の写真、アルバム・カヴァーの全景ばかりなのである。
それにそもそも、その程度の調査で判明する様な事ならば、どこぞのサイトでそれが紹介されている様な気もする。
さもなければ、本作品を鑑賞する様な人物達にとっては、ここに掲載されている野球選手 (Baseball Players) がどこの誰であろうと、作品に向かう際には、無関係な存在であると謂う事なのだろうか。

もしも、9人編成の音楽プロジェクト (Nonet) ならば、そこに野球 (Baseball) のアナロジー (Analogy) が介入するのは少しも不思議ではない。だが、この作品はトリオ (Trio)、3名による演奏なのだ。

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と、なると、野球 (Baseball) の3要素、投打走 (Pitch Hit And Run) のアナロジー (Analogy) なのだろうか。そうすると、左端の写真、デレク・ベイリー (Derek Bailey) のクレジットの上にある写真は、投手 (Pitcher) を撮影したモノとなるが、そんな認識でいいのだろうか。
いや、それ以前に、左端の人物が誰であろうとも、野球 (Baseball) の投打走 (Pitch Hit And Run) に象徴され得る様な役割を、音楽上乃至は演奏上、デレク・ベイリー (Derek Bailey) とジョージ・ルイス (George Lewis) とジョン・ゾーン (John Zorn) の3名が分担していると解釈してもいいのだろうか。

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右端の写真は、盗塁 (Stealing A Base) 間際の走者 (Runner) と守備 (Fielding) との攻防の瞬間を撮影したモノなのだろうが、写真に映し出されたアクロバティックな走者 (Runner) の姿勢は、あながち、本作品でのジョン・ゾーン (John Zorn) のそれと重なってみえなくもない。
担当楽器のクレジットだけをみても、アルト・サックス (Alto Saxophones)、 ソプラノ・サックス (Soprano Saxophones)、クラリネット (Clarinets)、 ゲーム・コール (Game Calls) と極めて多彩なのだ。

猶、最後のゲーム・コール (Game Calls) とは狩猟の際に獲物を呼び寄せる為に吹く笛 (Whistle) の事、日本語 (Japanese Language) にそれに相応しい訳語がありそうでみあたらない。
犬笛 (Dog Whistle) では犬 (Dogs) にしかその音は聴こえない筈だし、それとよく似た牧笛 (Shepherd's Pipe) は放牧している家畜を呼ぶモノだし、狩猟笛 (Hunting Horn) ではモンスター・ハンター (Monster Hunter) の中でしか通用しない表現だ。
鹿笛 (Deer Calls) で良いのだろうか? [これと正反対の役割の鹿避け笛 (Save-A-Deer Whistle) と謂うモノもあるのだが]

上掲写真とジョン・ゾーン (John Zorn) のクレジットとの関係性から類推 (Analogy) 出来る様なモノを果たして、他のふたり、デレク・ベイリー (Derek Bailey) とジョージ・ルイス (George Lewis) のそれに匹敵させてもいいのだろうか。
単純に考えれば、デレク・ベイリー (Derek Bailey) が投げた"球 (Ball) =音 (Sounds)"をジョージ・ルイス (George Lewis) が打ち、その間にジョン・ゾーン (John Zorn) が走る、と謂う様な発想だ。しかも、この構図で説明してしまえば案外、誰からの共感をも勝ち得てしまえたりもする。

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いや、そもそも、何故に作品名が『ヤンキース (YANKEES)』なのだろうか。
その名を名乗るに相応しいのは、ニュー・ヨーク (New York) 出身のジョン・ゾーン (John Zorn) だけで、デレク・ベイリー (Derek Bailey) はサウス・ヨークシャー (South Yorkshire) 出身で、ジョージ・ルイス (George Lewis) はイリノイ (Illinois) 出身だ。
いやいやそうぢゃない。
ニューヨーク・ヤンキース (New York Yankees) 自体が、地元出身の選手だけで構成されている訳ではない。と、なると、作品制作の拠点がニュー・ヨーク (New York) であると謂う主張なのだろうか。

と、謂う様な逡巡を、この作品を聴くといつもしてしまう。
そして、その逡巡をするおかげで結構、愉しく聴けてしまうから、困ったものなのだ。

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デレク・ベイリー (Derek Bailey) とジョージ・ルイス (George Lewis) のクレジットの位置が逆ならば、まだ安心出来る様な気がするのだ。さも、4番強打者 (Cleanup) 然とした面構えをした人物の下に、デレク・ベイリー (Derek Bailey) とあって欲しいと謂う、極めて個人的な、変な欲求だ。

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本作品発表4年後の1987年、ジョージ・ルイス (George Lewis) とジョン・ゾーン (John Zorn) は、デレク・ベイリー (Derek Bailey) ではないギタリスト (Guitarist) ビル・フリゼール (Bill Frisell) を加えたトリオ編成 (Trio) でニュース・フォー・ルル (News For Lulu) と謂うプロジェクト活動を行う[『ニュース・フォー・ルル (News For Lulu)』 [1988年発表] と『モア・ニュース・フォー・ルル (More News For Lulu)』 [1992年発表] の2作品がある]。
音楽的には、本作品の編成での演奏よりも、同じ編成のジミー・ジェフリー・トリオ (Jimmy Giuffre Trio) のそれに遥かに近い [と謂う様な事は以前にこちらで書いた]。
と、謂うよりも、編成こそ同じだとは謂え、本作品とニュース・フォー・ルル (News For Lulu)、もしくは本作品とジミー・ジェフリー・トリオ (Jimmy Giuffre Trio) との関係性はあるのだろうか。そこは甚だ疑問だ。

ぼく個人はジョン・ゾーン (John Zorn) と謂うアーティストを入り口にして本作品に遭遇したので、どうしても彼のキャリアの中での評価になってしまう。
デレク・ベイリー (Derek Bailey) のキャリアからの視点、もしくは、ジョージ・ルイス (George Lewis) のキャリアからの視点で、この作品を聴くと一体、どんな響きを聴く事が出来るのだろうか。

ものづくし(click in the world!)162. :
『ヤンキース (YANKEES)』
by ジョン・ゾーン (JOHN ZORN) デレク・ベイリー (DEREK BAILEY) ジョージ・ルイス (GEORGE LEWIS)


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ヤンキース (YANKEES)』 by ジョン・ゾーン (JOHN ZORN) デレク・ベイリー (DEREK BAILEY) ジョージ・ルイス (GEORGE LEWIS)

1. シティ・シティ・シティ 8:27
 CITY CITY CITY (J. Zorn / D. Bailey / G. Lewis)
2. ザ・レジェンド・オブ・イノス・スローター 9:25
 THE LEGEND OF ENOS SLAUGHTER (J. Zorn / D. Bailey / G. Lewis)
3. フーズ・オン・ファースト 3:13
 WHO'S ON FARST (J. Zorn / D. Bailey / G. Lewis)
4. オン・ゴールデン・ポンド 17:47
 ON GOLDEN POND (J. Zorn / D. Bailey / G. Lewis)
5. ザ・ワーニング・トラック 5:27
 THE WARNING TRACK (J. Zorn / D. Bailey / G. Lewis)
TOTAL PLAYING TIME 44:31

Derek Bailey - acoustic and electric guitar
George Lewis - trombone
John Zorn - alto, soprano saxophones, clarinets, game calls

Recorded at OAO studio, Brooklyn NY by Martin Bisi
Mastered by Howie Weinberg, Masterdisk NYC
Artwork production Thi-Linh-Le
All Selections are improvisations, heard as played

(P) 1993 JIMCO RECORDS : A DIVISION OF JIMCO JAPAN CORP

ぼくが所有している日本盤CDには福島恵一 (Keiichi Fukushima) の解説が添付されている。
また、帯には以下のコピーと紹介文が掲載されていたので、それもそのまま掲載する。

「ネイキッド・シティ、ペインキラー ...。あらゆる既存の音楽を打ち破るジョン・ゾーン!
デレク・ベイリー、ジョージ・ルイスといったインプロの巨人を相手にした現在の輝かしい彼の第一歩となる名作が遂に登場!!
<ヤンキース>
ネイキッド・シティ、ペインキラーなど緻密な音楽性と変態奏法でおなじみの鬼才、ジョン・ゾーン (as, ss, cl, game calls) とインプロヴィゼーション [即興音楽] の巨人的存在、デレク・ベイリー (ag, eg)、ジョージ・ルイス (tr) の歴史的トリオ・ユニット。おどろおどろしい奇妙なサウンドからは三人の果てしない創造性と異常な緊張感が伝わってくるほど凄まじい。もちろんジョン・ゾーンら三人にとって重要な作品であるヤンキース。言うまでもなく、ロック、ジャズなどあらゆる音楽ファンの必聴盤であることにちがいない。
解説:福島恵一」
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