2016.03.01.09.09

らくだのこぶ

駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) である。
と、謂う様な事は、既に一般常識として横行している事柄だと思い込んでいたら、必ずしもそうではないらしい。
と、綴ってしまうと誤解も誤謬も引き摺り込んでしまうから、もう少し、事実関係を整理してから、次の様に書き直そう。

駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) であると謂う趣旨の文章の前段には、ほぼ必ず、水 (Water) ではなくて、と謂う注釈が付く。この注釈が、様々な事を想像させるのだ。

駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は"水 (Water) ではなくて"脂肪 (Fat) である。
この文章が、事実関係として伝えたい真実が「駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) である」と謂う事は注釈の有無に関わらずに、変動はない。だが、それ以上にこの一文は、世評や風評として「駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は水 (Water) 」と謂う認識が横行している、と謂う前提を踏まえて、語られている。

それがぼくには不思議なのだ。

例えばぼくの場合「駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) である」と謂う事実は、学年誌 (Grade Magazine) や児童向けの書籍で、散々、口すっぱく解かれてきた事なのだ。それも一度や二度の事ではない、と想う。
だから、ぼく達同世代かそれ以降の世代にとっては「駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) である」と謂う事は、揺がし様もない絶対的な真実であって、そこに"水 (Water)"の介在すべき余地は一切ない、と想っているからなのだ。

だから、何故に"水 (Water) ではなくて"と謂う注釈が未だに存在し得るのか、これが大きな疑問なのである。
いや、嘘だと想うのならば、"駱駝 (Camel's Hump)"等でネット検索してみればいい。その検索結果として登場する文章の殆どに"水 (Water) ではなくて"と謂う趣旨の注釈が登場しているのだから。

考えられる要因は幾つかある。
ひとつは、ぼく個人の認識が、非常に特殊な認識である事。つまり「駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) である」と謂う事実を再三再四、書き解かれていたと謂う認識自体が非常に偏ったモノである可能性があると謂う事だ。ぼく個人の極めて特殊な体験に基づく偏見の可能性があるのだ。
ひとつは、駱駝 (Camel) の (Hump) の中身が"水 (Water) "であると謂う誤った事実が、未だに横行していると謂う可能性が高い事。つまり、誰しもがぼく個人の体験の様に、再三再四「駱駝 (Camel) の (Hump) の中身は脂肪 (Fat) である」と口説かれたのにも関わらず、誤った認識を打ち砕く事が出来ていない、そんな可能性だ。
ひとつは、落語 (Rakugo) で謂う (Makura : Pillow) の様に、もしくは、和歌 (Waka) に於ける序詞 (Jokotoba) の様に、駱駝 (Camel) の (Hump) を語る際には必ず"水 (Water) ではなくて"と謂う一節が希求されてしまう、と謂う可能性。駱駝 (Camel) の (Hump) を語る際には、クリシェ (Cliche) としてその一節が必須となってしまうと考える事が出来ない訳ではない。それは恐らく、"水 (Water) "の対義語の様な存在として「脂肪 (Fat) 」があると謂う事と、事実である「脂肪 (Fat) である」を強く印象付ける為の便法として、事実ではない"水 (Water)"と謂う素材を敢えて登場させる、そんなと論法があるからではないだろうか。

と、謂う様なここまで綴ってきた事は、正に落語 (Rakugo) で謂う (Makura : Pillow) であって、ここから先が本題だ。
ちなみに落語 (Rakugo) の演目である『駱駝 (Rakuda : Camel)』はここには登場しない。これに関してはいつかどこかで登場してもらうつもりがあるからなのだ。

脂肪 (Fat) の塊である筈の駱駝 (Camel) の (Hump) の不思議は、実は別のところにある。

駱駝 (Camel) の (Hump) に相当するモノがあるのは駱駝 (Camel) だけなのである。正式に謂えば、駱駝属 (Camel) に属する2種、一瘤駱駝 (Dromedary) と二瘤駱駝 (Bactrian Camel) にしかない。
その類縁のビクーニャ属 (Vicugna) [ビクーニャ (Vicugna) とアルパカ (Alpaca)] やラマ属 (Lama) [グアナコ (Guanaco) とラマ (Llama)] には (Hump) はない。駱駝属 (Camel) もビクーニャ属 (Vicugna) もラマ属 (Lama) も、同じ駱駝科 (Camelid) に分類されている。
外見上、 (Hump) の有無を除けば、彼等を駱駝 (Camel) の類縁としてみるのはそんなに困難な事はないが、逆に (Hump) の有無をもって駱駝 (Camel) や否やを問えば、彼等の帰属は途端に怪しくなる。
極端な話、 (Hump) のない駱駝 (Camel) の事をビクーニャ (Vicugna) やアルパカ (Alpaca) やグアナコ (Guanaco) やラマ (Llama) だと断定してしまっても、少なからぬ説得力はあるかもしれない。

ところで、上の文章を読めば、解るヒトにはたちどころに解ってしまう事だと思うが、これから綴る文章は全く、学術上の前提に立ったモノではないのだ。
素人考えの浅はかな知恵を振り回しているだけなのである。
だから、事実関係の誤認や誤用があれば、糾すなり正すなりして頂ければ、幸いです。だからと謂って、無闇に質されてもそれに対する的確な解答を用意出来るかどうかは全くもって自信がないので、そこは事前にご了承を願う次第なのだ。

さて、同じ駱駝科 (Camelid) に属するビクーニャ属 (Vicugna) とラマ属 (Lama) から、駱駝属 (Camel) [一瘤駱駝 (Dromedary) と二瘤駱駝 (Bactrian Camel)] を分類するのには、 (Hump) の有無がその認定に役立つとすると、もう一つ彼等を分類するのに可能な特質がもう一つある。それは生息地だ。
ビクーニャ属 (Vicugna) もラマ属 (Lama) も南アメリカ大陸 (South American Continent) に生息していて、駱駝 (Camel) は御存知の様に、殆どがアジア大陸 (Asian Continent) の乾燥地帯 (Arid) に生息している [オーストラリア大陸 (Australia Continent) に駱駝 (Camel) がいない訳ではないがこれは家畜が野生化したモノだ]。
だからここで大雑把に、瘤のない駱駝 (Camel) は南アメリカ大陸 (South American Continent) にいて、瘤のある駱駝 (Camel) はアジア大陸 (Asian Continent) の乾燥地帯 (Arid) にいる、と謂う事も出来ないではない。

そうやって考えると、 (Hump) と乾燥地帯 (Arid) は切っても切れない関係にある様な気がするのだが、ここで大変困った事態が出来する。
乾燥地帯 (Arid) に生息する動物に、 (Hump) をもった動物はどうやら駱駝 (Camel) しかいない様だからだ。

例えば寒冷地に生息する生物の殆どの体毛や皮膚が白色である様に、例えば島嶼に生息する動物の殆どが本土に生息する同種の動物よりも小型化している様に、その棲む環境に合わせて、分類上の違いを超えた時点で共通の特徴を見出す事は多い。
それは乾燥地帯 (Arid) に活きる動物達にも謂えて、体毛や体色や体質にある共通の接点を見出す箇所は幾つもある。
だけれども、 (Hump) のある動物はどうやら駱駝 (Camel) しかいない様なのだ。

つまり、乾燥地帯 (Arid) に生息する動物達にとって、脂肪 (Fat) の塊である (Hump) は、必ずしも必須のモノではない、と謂う事になる。
乾燥地帯 (Arid) に生息する動物達の中で唯一、駱駝 (Camel) だけが (Hump) を必要としているのである。

それはおそらくそうなのだろうと想う。
乾燥地帯 (Arid) に活きる動物の殆どが、数少ない緑地帯に生息していて、そこを移動すると謂う事がないからなのだ。逆に謂えば、駱駝 (Camel) は、他の同地域に生息する動物達と隔絶した生活をしていると謂う事になる。

オアシス (Oasis) からオアシス (Oasis) へ。
駱駝 (Camel) が永い行動範囲をもつのは、それは彼が元来、他の地域から移動した結果、その乾燥地帯 (Arid) に棲む様になった証左なのか、それとも、家畜化された成果によるモノなのか。
駱駝 (Camel) の (Hump) と謂うモノの誕生秘話はそこら辺りにあるのではないだろうか。

images
上記掲載画像はエドワード・トプセル (Edward Topsell) による『四足獣と蛇の歴史 (The History Of The Four-footed Beasts And Serpents)』 [1658年刊] にある一瘤駱駝 (Dromedary) の挿画であって、この画像はそのまま『動物シンボル事典 (Dictionnaire du symbolisme animal. )』 [ジャン=ポール・クレベール (Jean-Paul Clebert) 1971年刊] の駱駝 (Camel) の項にも転載されている。[掲載画像はこちらから。]
その『動物シンボル事典 (Dictionnaire du symbolisme animal. )』 を繙けば、駱駝 (Camel) の項の冒頭、次の様な記述に出くわし、吃驚とする。

「アラビア人たちは、死というのは家の扉ごとに座り込む駱駝である、とよく言う。」

次回は「」。
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