2016.02.21.11.20

『サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン (Sarah Vaughan)』 by サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan)

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いつもの様に、この上に掲載してある稚拙なイラストを描こうと思って、作品のオリジナル画像を捜していて、ようやく気づいたのだった。
2種類ある。

2種類、と謂ってもアルバム・ジャケット全体の印象はそうは変わらない。

画面の右側が闇に包まれていてそこから身を乗り出す様に、本作品の主人公のひとり、サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) が覗き込んでいる。その反対側には、サックス ( Tenor Saxophone) の管をみてとれるからきっと、この半身はポール・クイニシェット (Paul Quinichette) のものだろう。
と、謂う事が判別がつけば、サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) が身を潜ませている様にもみえる闇は、ピアノ (Piano) の大屋根 (Lid) であるのだ。
撮影はウイリアム・クラクストン (William Claxton)。同日のフォト・セッションと思われるモノが2点、CDバック・カヴァーに掲載されているが、本来ならばもっと数多くの写真が登場してもいい。

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2種類と謂うのは、掲載写真の事ではない。
本作品のもうひとりの主人公、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) の扱いなのだった。
[上に掲載するのは同日のフォト・セッションの1点。ピアノ (Piano) に向かうジミー・ジョーンズ (Jimmy Jones) とその頭上のサラ・ヴォーン (Sarah Vaughan)、そしてその右がクリフォード・ブラウン (Clifford Brown)、こちらより。]

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ぼくの手許にあるCDには、画面中央よりもやや下側、ヴォーカリスト (Vocalist) の名前があおく印字されているその下に「アカンパニード・バイ (Accompanied By)」の文字と共に、本作品の共演者のひとりとして担当楽器名と共に、その名前が印字されている。
参加者6人の筆頭にその名はあるが、書体や級数は他の5人と同じ。筆頭にあるのも彼の楽器がトランペット (Trumpet)、最高音域の楽器であるからなのだろう。

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だけれども、ネット等でみると、参加者の名前が表示されているべき場所総てをクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) ただひとりの名前を表示する為に割いているモノもあるのだ。

ぼく達は通常、何も考えずに本作を『ウィズ・クリフォード・ブラウン (With Clifford Brown)』と呼んでいるのだけれども、それは後についた通称だ。
正式には単純にヴォーカリスト (Vocalist) の呼称でもって命名されているのにすぎない。『サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan)』と謂うのだ。

一体、いつからトランペッター (Trumpetter) の名称が作品名の通称として定着したのか解らないのだけれども、その通称が定着したのを踏まえて、ジャケット上でもクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) の扱いが大きくなったのだろう。2種類のジャケットがあるのはその結果だ。

[ここで、ネタとして引っ張っても仕様がないので明らかにしてしまうが、『ウィズ・クリフォード・ブラウン (With Clifford Brown)』と呼ばれている他の2作品でも発表当時、このトランペッター (Trumpetter) が破格の扱いを受けている訳ではない。
つまり、制作者側の意図としては、制作当時はどの作品とも、そのヴォーカリスト (Vocalist) の作品以上の存在として制作していた訳ではないからだ。]

と、ある種のヒトビトにとってはどうでもいい様な事に拘泥してみせたのは、ぼく個人の観点から見れば、『ウィズ・クリフォード・ブラウン (With Clifford Brown)』と世評は高いが、では一体、どこにクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) がこの作品にいるのだろう、と謂う疑問があるからなのだ。

確かに彼は本作品の収録には参加しているし、実際に、本作品での演奏を聴けば聴く程、味わい深い演奏は聴ける。
でも、それはサラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) と謂うヴォーカルがあって初めて成立する世界ではないだろうか、と謂う気がするし、サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) がトランペット (Trumpet) 演奏を引き立てる為の役割を演じてはいない、と思うからなのだ。

サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) の歌唱を悉く聴き込んでいる訳ではないのだけれども、幾つかの作品や幾つかの歌唱を聴くたびに思うのは、彼女は変化球のひとなのだな、と謂う事なのだ。
譜面に書かれている事、歌詞として綴られている事、それらに必ずしも忠実ではない様だ。だからと謂って、それらから完全に離脱はしない。それらの許容と拒否、そのぎりぎりのラインを彼女は踏むのだ。
だから、いつも彼女の歌唱には、いい裏切りがある。そして、その裏切りを素晴らしい音楽として堪能する事が出来る。

そして、思うのは、それではそんな裏切りを思いのままに堪能させてくれる演奏と謂うのは一体、どんな演奏なのだろうか、と。
サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) とともに飛躍した方がいいのか、それとも?

ひとつの解として考えられるのは、実直すぎる程に実直な演奏だ。
それがあれば彼女はどこまでも自由だし、結果として得られる自由を愚直なまでにぼく達にみせつける事が出来る筈だ。

もう一度綴ると、少なくとも本作品ではサラ・ヴォーン (Sarah Vaughan) の方が、バックの演奏を引き立てる様な役割は一切、演じていない。

ここで、いやいや、クリフォード・ブラウン (Clifford Brown) が黒衣 (Kuroko) に徹しているからでしょう、そして、黒衣 (Kuroko) に徹する事の出来るクリフォード・ブラウン (Clifford Brown) を評価すべきでしょう、と謂う声が聴こえない訳ではない。
だから、そんな声への事前の反証として、2種類のジャケット・ワークを引っ張り出してきた、と謂う訳なのである。

寧ろ、ふたつの才能を見事に引き出した編曲者アーニー・ウィルキンス (Ernie Wilkins) を顕彰すべきなのだろうか、そんな気もしているのだ。

ものづくし(click in the world!)160. :
『サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン (Sarah Vaughan)』 by サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan)


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サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン (Sarah Vaughan)』 by サラ・ヴォーン (Sarah Vaughan)

ジャズ・ヴォーカルの女王、サラの決定的名盤。

1. ララバイ・オヴ・バードランド 4:04
 LULLABY OF BIRDLAND (Shearing - Foster)
2. パリの四月 6.:21
 APRIL IN PARIS (Harburg - Duke)
3. ヒーズ・マイ・ガイ 4:14
 HE'S MY GUY (Raye - DePaul)
4. ジム 5:52
 JIM (Rose - Petrillo - Shawn)
5. ユーアー・ノット・ザ・カインド 4:46
 YOU'RE NOT THE KIND (Hudson - Mills)
6. エンブレイサブル・ユー 4:52
 EMBRACEABLE YOU (George and Ira Gershwin)
7. アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー 5:10
 I'M GLAD THERE IS YOU (Madeira - Dorsey)
8. セプテンバー・ソング 5:47
 SEPTEMBER SONG (Weil - Anderson)
9. イッツ・クレイジー 4:58
 IT'S CRAZY (Field - Rodgers)
TOTAL PLAYING TIME 46:36

サラ・ヴォーン vo
SARAH VAUGHAN : vocal
クリフォード・ブラウン tp
CLIFFORD BROWN : trumpet
ハービー・マン fl
HERBIE MANN : flute
ポール・クイニシェット ts
PAUL QUINICHETTE : tenor sax
ジミー・ジョーンズ p
JIMMY JONES : piano
ジョー・ベンジャミン b
JOE BENJAMIN : bass
ロイ・ヘインズ ds
ROY HAYNES : drums

Recorded in New York, December 18, 1954

ぼくの所有する日本盤CDには【油井正一 1971年 記】と明記された油井正一 (Shoichi Yui) の解説が添付されている。
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