2016.01.10.22.28

Cause You're Wonderful:追悼デヴィッド・ボウイにかえて

彼の音楽的キャリアを一望したいのならば、彼の楽曲『チェンジス (Changes)』 [アルバム『ハンキー・ドリー (Hunky Dory)』収録 1972年発表] で充分だよな。コーラス部で繰り返される破裂音の小気味よさひとつ取り上げても、彼の特異なポップ感覚は如実にそこに顕れているし、なにより、変化 (Changes) こそ彼の音楽遍歴そのものだ。
[この曲のコーラス部での破裂音は全くそのままに、ザ・ランナウェイズ (The Runaways) の楽曲『チェリー・ボム (Cherry Bomb)』 [アルバム『悩殺爆弾〜禁断のロックンロール・クイーン (The Runaways)』収録 1976年発表] で時限爆弾が時を刻む音に変えた姿を聴く事が出来るのだけれども、このふたつの楽曲に関連性はあるのだろうか?]

と、醒めた物謂いを演出する事はとても簡単な事なのだけれども、さっきからぼくの耳にこだましているのは、楽曲『チェンジス (Changes)』 ではない。別の曲だ。

ポップ・ソングの表層をまとってはいるものの、そこで聴く事の出来るのは、まるで腑抜けになった廃人の戯言の様なメロディーだ。ふわふわと漂うばかりで核心が一切ない。しかも、その確信のない戯言を構築しているのは、偏執狂じみた音響への拘りだ。
その楽曲『サウンド・アンド・ヴィジョン (Sound And Vision)』 [アルバム『ロウ (Low)』収録 1977年発表] と謂う。
この楽曲名もまた、故人の音楽制作に於ける姿勢を指し示す様な言葉だ。

1989年にライコディスク (Rykodisc) から発売されたボックス・セット『サウンド・アンド・ヴィジョン (Sound + Vision)』の名称ともなり、その発売を機に、彼の旧音源が遅まきながら、続々とCD化されていった。

そういう意味に於いても「サウンド・アンド・ヴィジョン (Sound And Vision) 」と謂う語句は、故人の代名詞にもなり得る象徴的な言語だけれども、冷静に考えると変な言説なのだ。
一見、聴覚と視覚と謂う日本語に置換出来そうな気もするが、置換した直後に、果たして、それで及第出来るのか、疑問が沸き起こってくる。
「サウンド (Sound)」によっても「ヴィジョン (Vision)」を得る事も充分にあり得るのではないか。そうすると、「サウンド (Sound)」が原因で「ヴィジョン (Vision)」が結果なのだろうか。
[譬え話をする。"頭痛と歯痛"ならば何の問題もない表現だ。しかし、"頭痛と虫歯"とすると、途端に齟齬が起きる。何故ならば、"虫歯"は症状を顕す言語である一方で、その症状にさい悩まされる歯そのものを指す場合もあるからだ。]
「サウンド・アンド・ヴィジョン (Sound And Vision)」と謂う語句を厳密に解釈しようとすると、袋小路を右往左往する結果となる。勿論、歌詞を読んでみても、その意味するところの、欲しい解答が得られる訳ではない。

故人の歌詞は時折、そんな幻惑と困惑をぼくにもたらしてくれる。

具体的な固有名詞が織り込まれていても、その固有名詞が象徴的になにかを表象しているとは限らない。
寧ろ、歌詞のそとをみた方が単純にそれを理解する事が出来る様な気がしてくる。

ジギー・スターダスト (Ziggy Stardust) にシン・ホワイト・デューク (The Thin White Duke)。

だけれども、それらがそのまま、イコール・デヴィッド・ボウイ (David Bowie) と断言出来る訳でもない。
ぼく達が安心してそう声をかけた瞬間、そのものはするりと消えてしまっているからだ。

[ぼくの、最初に出逢った彼は、シン・ホワイト・デューク (The Thin White Duke) だった。しかも音楽家としての彼よりも、映画『地球に落ちてきた男 (The Man Who Fell To Earth)』 [ニコラス・ローグ (Nicolas Roeg) 監督作品 1976年制作] の主演男優としての方が先だ。]

アルバム『ジギー・スターダスト (The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars)』 [1972年発表] 発表当時、確かにデヴィッド・ボウイ (David Bowie) はジギー・スターダスト (Ziggy Stardust) だった。では、その収録曲のひとつである『ロックン・ロールの自殺者 (Rock' N' Roll Suicide)』とは一体、誰なのか。
5年前に預言された通りに地球が破滅して、そこにたった独り生き遺った宇宙人が壮絶なギター・ソロを奏でているその際に、彼はそこにいるのだろうか。それとも、望み通りに自ら絶命してしまっているのだろうか。

恐らく、その作品の中で語られているジギー・スターダスト (Ziggy Stardust) の物語の、その外部に『ロックン・ロールの自殺者 (Rock' N' Roll Suicide)』はいるのに違いない。しかも彼はたった独りではない。

ぼくが考えるのに『ロックン・ロールの自殺者 (Rock' N' Roll Suicide)』とは誤訳なのだ。
"ロックン・ロールに殉じるもの"と訳すべきなのではないだろうか。

ルー・リード (Lou Reed)、イギー・ポップ (Iggy Pop)、イアン・ハンター (Ian Hunter)、...。デヴィッド・ボウイ (David Bowie) が「きみはすばらしい (Gimme Your Hands Cause You're Wonderful)」と謂って、実際に掌を差し伸べたモノ達だ。
その他の自身の作品に収録したカヴァー・ナンバーの作者達 [当然ながらカヴァー・アルバム『ピンナップス (Pin Ups)』 [1973年発表] 収録楽曲の作家陣] も、それには含まれる。

故人が興味を示し、関心を寄せる事、それが結果的に、ぼく達にその音楽が届く事になった。
デヴィッド・ボウイ (David Bowie) の名も知らぬ少年や少女も、実は少なからぬ恩恵を彼から受けているのではなかろうか。

「きみはひとりではない (You're Not Alone)」
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