2015.10.23.11.57

Peek-A-Boo

闇にまぎれてここまできた。目的の場所はすぐそこだ。いや、おれのあたまのうえだ、せなかのむこうだ。

おおむかしは、こんな場合、楽器をかなでたそうだ。それが盗人でないみのあかしなのだ。それでも、父親からはめのかたきにされる。一歩まちがえればころされかねない。
だが、警固のものもみのがすし、警察ですらおとがめはない。
だから、ギターは必需品だ。バイオリンでもいい。それで、おっての父親のあたまをぶんなぐる。正当防衛が成立するわけだ。

そんなロマンチックな時代はすでにおわった。いまは遠慮会釈もない殺伐とした時代だ。正当防衛を主張するのは父親のほうで、うんがよくてもかたわかはんごろし。ころされたところでだれも文句をいえるすじではない。ころされたほうのおやたちはなきねいりがせきのやまなのだ。

じゃあなぜそんな危険なつなわたりをするのか。
それがこのくにのしきたりだからだ。

おとこは成年にたっしたところで結婚の義務がある。
それをはたすには、同年のおんなのもとへしのんでいかねばならない。
できないものは兵になるか、僧になるか、さもなければ、去勢されてしまうかだ。いずれにしろ、一生、おんなと無縁の生活をしいられることになる。

かねがあるやつは、事前に示談をつむそうだ。さるすじをとうして、これこれこのよるに、おたくのむすめをいただきにまいりますと。
それでも、形式上の手順はふむのだ。
ある夜にしのんでいって、むすめをかどわかす。
このくにの結婚の儀だからだ。
つまれた札束をかぞえて、父親がみてみぬふりするだけのはなしだ。

だがときに、そんな事前交渉がありながらも、ころされてしまうおとこもいれば、ころしてしまう父親もいる。証拠はなにもないからな。
しかも、どちらにしても、殺人罪にはとわれない。
このくにの伝統にしたがったまでだ。
そうやって示談金かせぎにあけくれる父親もいるとかいないとか。

だから、おれはこうやってぬすみにきた。
ぬすんだむすねは依頼主のおとこにくれてやる。
それが契約さ。おれの商売なんだ。

[the text inspired from the song "Peek-A-Boo" from the album "Peepshow" by Siouxsie And The Banshees]


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