2015.09.01.14.00

やさしさにつつまれたなら

宮崎駿 (Hayao Miyazaki) 監督作品で一番好きな作品は映画『魔女の宅急便 (Kiki's Delivery Service)』 [1989年制作] なのだけれども、その作品で唯一納得がいかない点があるとしたら、そのエンディング・ナンバーなのだ。

つまり、荒井由美 (Yumi Arai) の楽曲『やさしさに包まれたなら (Yasashisa Ni Tsutsumareta Nara)』 [アルバム『ミスリム (Misslim)』収録 1974年発表] の事である。
楽曲はこちらで試聴可能で、歌詞はこちらに掲載されている。

メロディはいい。映画の主人公である魔女キキ (Kiki The Witch)の飛翔を軽やかに、そのまま音像化させた様な印象がある。だけれども、その楽曲の終盤近くに繰り返し顕われるコーラス・パートの歌詞が、ぼくは全く納得できないのだ。

「やさしさに包まれたなら きっと / 目にうつる全てのことは メッセージ」

この楽曲は「やさしさ (Yasashisa)」と謂うモノを"全き善きもの"と全肯定したところから始まって、それが一切揺るぎない。
それが、作者である荒井由美 (Yumi Arai) の世界認識であるとするのならば、表現の自由 (Freedom Of Speech) や信教の自由 (Freedom Of Religion) が約束されたこの世界に生きる以上、まだ耐え得る事は出来る。
だけれども、彼女の世界認識をそのまま引き受ける様なかたちで、映画『魔女の宅急便 (Kiki's Delivery Service)』 [宮崎駿 (Hayao Miyazaki) 監督作品 1989年制作] を観るのは御免蒙りたいと、ぼくは思うのだ。

映画『魔女の宅急便 (Kiki's Delivery Service)』の主題を非常に乱暴に定義してみれば、喪失と [再] 獲得の物語だ。
つまり、魔女 (Witch) である少女キキ (Kiki) の、唯一の魔女 (Witch) としての能力である飛翔能力が、一旦は喪われたモノのそれが再び彼女のモノへと回帰する。
その原因も理由も、物語の中では決して声高には語られていない。観るモノの理解力と判断の自由に委ねられている。
しかも、それらをなんと呼称しようが、映画を観る個人個人の責にそれはある。

だけれども、荒井由美 (Yumi Arai) のこの曲が流れてしまうと、各自に委ねられていた一切のモノが、仮令それがどの様なモノであろうとも、乱暴にたったひとつの語句、「やさしさ (Yasashisa)」と謂う名称の下へと収斂されてしまうのだ。

「やさしさ (Yasashisa)」と謂う語句は非常に便利な語句だ。
英訳を試みようとすればそれは、"Kindness"にも"Gentleness"にも"Ease"にも"Naiveness"にもなる。

個人的な事を綴れば、幼い頃、ぼくはしばし「おまえはやさしい」と謂れた。
それは褒め言葉である時もなかった訳ではないが、大概は、暗に、おのれの腑甲斐なさ (Cowardice) や優柔不断さ (Indecision) を責めている文言だった。

映画『魔女の宅急便 (Kiki's Delivery Service)』の根底に流れているモノが、多重な意味をもつそんな「やさしさ (Yasashisa)」ならばそれでも構わない。
だが、荒井由美 (Yumi Arai) のその曲にある「やさしさ (Yasashisa)」とは、そのごく一部の意味合いだけを救いとったモノの様にしかぼくには思えない。
表現を変えれば、いろいろな鑑賞を可能とする映像作品の解釈を、たったひとつのモノだけに限定する機能を、その楽曲は備えている様に、ぼくには思える。

images
例えば、この映画の為の、糸井重里 (Shigesato Itoi) のキャッチコピー (Advertising Slogan)「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。 (It’s been hard at times, but I’m alright.)」から汲み取れる主人公キキ (Kiki) の感情を楽曲『やさしさに包まれたなら (Yasashisa Ni Tsutsumareta Nara)』のなかでうたわれた「やさしさ (Yasashisa)」に謂い換えてもいいモノなのだろうか、と謂う事なのである [上記掲載画像はこちらから]。

次回は「」。
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