2015.08.11.09.55

のすふぇらとぅ

映画『吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu - Eine Symphonie des Grauens)』 [F・W・ムルナウ (Friedrich Wilhelm Murnau) 監督作品 1922年制作] での、タイトル・ロールである吸血鬼 (Vampir) の、オルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] の存在を知ったのは、随分昔の事である。

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それは、『いちばんくわしい世界の妖怪図鑑』 [編著:佐藤有文 (Arifumi Sato) 1973立風書房ジャガーバックス刊] に掲載されていたたった1点のスチール写真で、1970年代前半、ぼくが小学校中学年の頃の事だ。
幾つもある吸血鬼映画 (Vampir Film) に登場する吸血鬼 (Vampir) 達の写真に混じってそれはあった。
帆船上を思わせる、ぶっといロープが何本も写り込んだ白昼の光景、そこに黒づくめの禿頭の人物がうつっていた。眼光は白く輝き、妖しげにひらかれた両の掌の先の指には、ながい爪が生えていた。
[掲載画像はこちらから]

その写真に付随するリード文の文言はちゃんと憶えてはいない。記憶にあるのは、吸血鬼 (Vampir) と謂う妖怪に備わる幾つもの約束事の悉くを、彼が破っている事の指摘であった。
即ち、白昼堂々と、陽光に我身を晒す過ちを、彼は平気で犯しているのだ。

その次に、オルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] の存在を憶い起こさせたのは、ザ・ストラングラーズ (The Stranglers) のヒュー・コーンウェル (Hugh Cornwell) だった。
1979年に発表された、彼のバンドを離れてのソロ・プロジェクトは、キャプテンビーフハート・アンド・ヒズ・マジック・バンド (Captain Beefheart) And His Magic Band) のロバート・ウィリアムス (Robert Williams) との共同作品でアルバム名を『ノスフェラトゥ (Nosferatu)』と謂い、その巻頭を同名曲『ノスフェラトゥ (Nosferatu)』が飾っている。
のみならず、アルバム・ジャケットは映画『吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu - Eine Symphonie des Grauens)』 [F・W・ムルナウ (Friedrich Wilhelm Murnau) 監督作品 1922年制作] のワン・シーン。彼の住処である古城に帰還するオルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] の姿を観る事が出来る。
しかも、それだけではない。
そのアルバムには、クリーム (Cream) のカヴァー『ホワイト・ルーム (White Room)』 [のオリジナル・ヴァージョン『ホワイト・ルーム (White Room)』はアルバム『クリームの素晴らしき世界 (Wheels Of Fire)』収録楽曲で1968年の発表] が収録されているがその演奏やアレンジ云々とは別のところで、そのプロモ・クリップの映像があからさまに映画『吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu - Eine Symphonie des Grauens)』 [F・W・ムルナウ (Friedrich Wilhelm Murnau) 監督作品 1922年制作] へのオマージュなのだ。

映画『吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu - Eine Symphonie des Grauens)』 [F・W・ムルナウ (Friedrich Wilhelm Murnau) 監督作品 1922年制作] は当初、ブラム・ストーカー (Bram Stoker) の小説『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [1897年発表] を原作とし、その映画化作品として目論まれていた。
しかし、なんらかの理由で映像化の権利を得る事が出来ずその結果、小説『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [1897年発表] を骨子としながらも、恐ろしく大胆な改変を様々な箇所で試みている。
禿頭の吸血鬼 (Vampir)、オルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] のその怪異な相貌は、そのひとつでもある。

だからと謂って、その怪異な相貌をもって、小説『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [1897年発表] を原作として映画化した幾つかの映像作品とを比べ、そこに一方の優と他方の劣をみいだすのは、あまり利口な方法とは謂えない。

映画『魔人ドラキュラ (Dracula)』 [トッド・ブラウニング (Tod Browing) 監督作品 1931年制作] でドラキュラ伯爵 (Count Dracula) を演じたベラ・ルゴシ (Bela Lugosi) や、映画『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [テレンス・フィッシャー (Terence Fisher) 監督作品 1958年制作] を嚆矢とするハマー・フィルム・プロダクション (Hammer Film Productions) 作品でのドラキュラ伯爵 (Count Dracula) を演じたクリストファー・リー (Christopher Lee) や、その後裔と謂うかお上品なパロディとしてのカウント伯爵 (Count von Count) [TV教育番組『セサミストリート (Sesame Street)』 [1969年より放送] に登場するマペット (The Muppets)] は存在していて、それらの最大公約数 (Greatest Common Measure) 的なモノがぼく達の中にある吸血鬼 (Vampir) だ。
映画『吸血鬼ノスフェラトゥ (Nosferatu - Eine Symphonie des Grauens)』 [F・W・ムルナウ (Friedrich Wilhelm Murnau) 監督作品 1922年制作] のオルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] は異端でしかない。
そして、そういった認知の下で『いちばんくわしい世界の妖怪図鑑』 [編著:佐藤有文 (Arifumi Sato) 1973立風書房ジャガーバックス刊] も編まれている。

だけれども、小説『吸血鬼ドラキュラ (Dracula)』 [1897年発表] に於けるドラキュラ伯爵 (Count Dracula) の初登場シーンを思い浮かべてみれば、ジョナサン・ハーカー (Jonathan Harker) の前にそこに顕れる老人の異様な姿は、ベラ・ルゴシ (Bela Lugosi) やクリストファー・リー (Christopher Lee) やカウント伯爵 (Count von Count) のそれよりも寧ろ、オルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] の方に近いのではないだろうか。

映画化権を得る事が叶わなかった為に、放棄せざるを得なかった幾つもの形式や形骸を放棄した結果、幾つもの本質的なモノが、その映画の中のオルロック伯爵 (Graf Orlok) [演:マックス・シュレック (Max Schreck)] の中にはいきづいている。

ヴェルナー・ヘルツォーク (Werner Herzog) が1978年に映画『ノスフェラトゥ (Nosferatu : Phantom der Nacht)』としてリメイクした [主役の吸血鬼 (Vampir) はクラウス・キンスキー (Klaus Kinski) が演じた] のも、その制作の舞台裏を物語化した映画『シャドウ・オブ・ヴァンパイア (Shadow Of The Vampire)』 [E・エリアス・マーヒッジ (E. Elias Merhige) 監督作品 2000年制作] が創られたのも、奈辺にその理由があるからではないだろうか。

次回は「」。

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