2015.05.26.12.07

れっといっとびー

洋楽を自覚的に聴き出した時季と、英語学習 (Larning English) が始まった時季が、ほぼ同時だったから、そこから始まる益もあれば害もある。

images
と、書くと大仰だけれども、例えばベイ・シティ・ローラーズ (Bay City Rollers) の楽曲『サタデイ・ナイト (Saturday Night)』[アルバム『エジンバラの騎士 (Rollin')』収録 1974年発表] の冒頭を唄えれば、土曜日 (Saturday) の綴りは一発だ。
[掲載画像はこちら]

ぢゃあ、その反対は? と、思い出そうとしても解りやすい具体例はなかなか浮かばないけれども、例えばザ・ビートルズ (The Beatles) の楽曲『レット・イット・ビー (Let It Be)』 [アルバム『レット・イット・ビー (Let It Be)』収録 1970年発表] は、どうだろうか?
この楽曲に関しては、多少の混乱がない訳ではない。

先ず、誰もが指摘する様に、楽曲タイトルをリフレインするあの、印象的なフレーズが、ぼく達の耳には「レット・イット・ビー (Let It Be)」とヒアリングする事が困難である事だ。『空耳アワー (A Moment A Ear In The Sky)』[ テレビ番組『タモリ倶楽部 (Tamori Club)』 [1982年放送開始 テレビ朝日系列放映] の1コーナー] 的な聴き取りを思わずぼく達に誘発させる様な譜割りと歌唱だ。
この譜割りと歌唱に関しては、欧米でのそれと日本でのそれの、発想の違いもあれば、それぞれの言語の構造の違いにも起因する事なので、真面目に研究するのに値する事象ではあるのだけれども、当時の誰もそこまでには考えは及ばない。
単純に、唄われている歌の雰囲気と、それに重なって聴こえる語句との落差を笑うだけなのだ。
もしもぼく達がこの楽曲に触れたり英語学習 (Larning English) を始める段階が、桑田佳祐 (Keisuke Kuwata) 登場以降ならば、もう少し真剣に、この事を考えていたのかもしれない。

それに第一、この楽曲のヴォーカリストであるポール・マッカートニー (Paul McCartney) の歌唱ならいざ知らず、後にはもっと砕けたり、崩したり、壊れたりした海外の歌唱を幾つも聴いていく事になるのだがそれを考えれば「レット・イット・ビー (Let It Be)」の聴き取りにくさはさしたる難易度はない。今考えればむしろ、ポール・マッカートニー (Paul McCartney) の歌唱の聴き取りやすさとそのフレーズの聴き取りにくさとの落差が、ぼく達に笑いを誘発させていた様に思える。

むしろ、ぼく達の間で話題になったのは、聴き取れない事と同時に、その結果から派生する意味の解らなさなのだ。

「レット・イット・ビー (Let It Be)」を構成する、個々の単語は単純で、「レット (Let)」と「イット (It)」と「ビー (Be)」の、それぞれが意味する処は解っている筈だ。
でも、だからと謂って、『ビートルズ詩集 2』 [著:ジョン・レノン (John Lennon)、ポール・マッカートニー (Paul McCartney) 訳:片岡義男 (Yoshio Kataoka) 1973年刊行] を繙いても、どうしてそんな解釈が成立するのか、見当もつかないのだ。

ここで片岡義男 (Yoshio Kataoka) の訳についての所見を述べてもいい処ではあるのだけれども、それ以前に実は、当時のぼく達の英語文法 (English Grammar) に関する知識の拙さに、大きな原因があるのだ。

「レット (Let)」に関しては、その幾つもある用法の中のたったひとつ「レッツ (Let's)」でしか学んでいない。
そしてそれと同じ様な理由で、「イット (It)」も「ビー (Be)」も、その本来が担う役割のほんのさわり程度しか学んでいない。
だから、当時獲得していた英語文法 (English Grammar) の知識をどんなに総動員しても、片岡義男 (Yoshio Kataoka) 的な訳は勿論、直訳すらも、叶わないのだ。

ここで、ちょっと面倒臭いけれども、英語文法 (English Grammar) 的な側面で「レット・イット・ビー (Let It Be)」を整理してみる。

先ず、文章そのものに主語が存在していないので、これは命令形 (Imperative Form) だ。
動詞 (Verb) である「レット (Let)」は、"レット (Let) + 目的語 (Object) + 動詞原形 (Infinitive Verb)"で、使役動詞 (Causative Verb) としての機能を果たす。"目的語 (Object) に動詞 (Verb) を「レット (Let)」する"と謂う構造となっていてこの場合、"イット (It) にビー (Be) させる"となるのだ。
そして、文章が命令形 (Imperative Form) だから"イット (It) にビー (Be) させなさい"となる。

ここまではいいよね。純粋に英語文法 (English Grammar) の構造に則って置換させただけだから。

ここから考えなければならないのは「イット (It)」とは何かと謂う事と、「ビー (Be)」するとは何かと謂う事。ここら辺りから解釈の問題が始まると思う。
「イット (It)」は、歌の中で語られている物語の中で、具体的に指摘する事が可能な事象かもしれないし、もっとざっくり考えて普遍的な何かもしくは抽象的ななにかを指し示しているモノなのかもしれない。
それを踏まえて考えれば「ビー (Be)」の後に具体的な行為を指す単語が省略されている可能性もある一方で、「ビー (Be)」本来の用法である、ある状態を指し示しているだけかもしれない。
但し、いずれの迂回路を通っても辿り着くべき直訳は「それをそのままの状態にさせなさい」と謂う様なモノになるのだと思う。

ここまで辿り着いてようやく、片岡義男 (Yoshio Kataoka) 的な解釈の妥当性に気づかされる、と謂う事なのだ。

次回は「」。

附記 1.:
ザ・ビートルズ (The Beatles) の楽曲に関する同種の問題を孕む [と謂っても『空耳アワー (A Moment A Ear In The Sky)』的な問題ではない] モノのひとつに、『プリーズ・プリーズ・ミー (Please Please Me)』[アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー (Please Please Me)』収録 1963年発表] がある。これを「どうぞどうぞ (Please, Please, Me)」と解釈してしまうとダチョウ倶楽部 (Club du L'Autruche d'Afrique) になってしまうが、そうではない。2度連続して登場する「プリーズ (Please)」は、英語文法 (English Grammar) 的には異なる分類となる。前者が副詞 (Adverb) で後者が動詞 (Verb) だ。

附記 2.:
今回は楽曲そのものの紹介は端折りました。

附記 3.:
さて、ここで問題です。
拙稿を読んだ上で、あなたは楽曲『レット・イット・ビー (Let It Be)』と楽曲『レット・イット・ゴー (Let It Go)』 [映画『アナと雪の女王 (Frozen)』 [クリス・バック (Chris Buck) 監督作品 2013年制作] 挿入曲 歌唱:イディナ・メンゼル (Idina Menzel)] それぞれの楽曲名 [だけで可] を訳し分けられますか?
関連記事

theme : ふと感じること - genre :

i know it and take it | comments : 0 | trackbacks : 0 | pagetop

<<previous entry | <home> | next entry>>

comments for this entry

only can see the webmaster :

tackbacks for this entry

trackback url

http://tai4oyo.blog108.fc2.com/tb.php/1771-ec12ec72

for fc2 blog users

trackback url for fc2 blog users is here