2015.05.19.12.30

なをなのれ

その旧いアニメ番組の冒頭は次の様なモノだった。
「誰だ!」
「人呼んで遊星仮面」

このやり取りを引き取って主題歌『遊星仮面 (Masque de Planete)』 [作詞・作曲:三木鶏郎 (Toriro Miki)] が始まる。
アニメ番組『遊星仮面 (Masque de Planete)』 [19661967フジテレビ系列放映] である。
番組本編の中でも、お約束通り、この台詞は登場する。

これと同種のオープニングを持ったアニメ番組がある。そこでは次の様な台詞が交わされてそのまま主題歌へと繋がれる。
「猪口才な小僧め / 名を 名を名のれ」
「赤胴! 鈴之助だ!!」

アニメ番組『赤胴鈴之助 (Akadou Suzunosuke』 [19721973フジテレビ系列放映] の冒頭であり、その主題歌『がんばれ! 赤胴鈴之助 (Fight ! Akadou Suzunosuke)』 [作詞:藤島信人 (Nobuto Fujishima) 作曲:金子三雄 (Mitsuo Kaneko)] の冒頭でもある。
アニメ番組としては『遊星仮面 (Masque de Planete)』よりも後発だが、 マンガ『赤胴鈴之助 (Akadou Suzunosuke)』 [作:福井英一 (Eiichi Fukui)~武内つなよし (Tsunayoshi Takeuchi) 19541960少年画報連載] からのアダプション作品であって、しかもそれはこのアニメ番組のみならず、それ以前に幾つもあり、その最初の作品であるラジオドラマ『赤胴鈴之助 (Akadou Suzunosuke)』 [19571959ラジオ東京放送] の頃からこのオープニングは既にある。
一言で謂えば、主題歌『遊星仮面 (Masque de Planete)』よりも主題歌『がんばれ! 赤胴鈴之助 (Fight ! Akadou Suzunosuke)』の方が先だ。

因みに、このラジオドラマこそが吉永小百合 (Sayuri Yoshinaga) のデヴュー作で彼女はヒロインの千葉さゆり (Sayuri Chiba) を演じている。1957年から1958年にかけて全部で9作ある映画版 (Movie Adaption) の第7作まではヒロインのしのぶ (Shinobu) 役は中村玉緒 (Tamao Nakamura) が演じてはいるが、そこでの映画冒頭と主題歌の扱いがどうなっているのかはよく解らない。
アニメ版はリアルタイムでは観たモノの、それはあくまでもラジオドラマの再編と謂う位置付けであって、吉永小百合 (Sayuri Yoshinaga) 云々と謂うエピソードは嫌になるくらいにその番組をリアルタイムで聴取した世代に聴かされたが、中村玉緒 (Tamao Nakamura) 云々と謂うエピソードは聴いた試しがないからだ。
ここから逆にサユリスト (Sayurist) と称されるヒトビトの業の様なモノを語る事も、中村玉緒 (Tamao Nakamura) のパートナーであった勝新太郎 (Shintaro Katsu) と謂う人物の業の様なモノも騙る事も出来そうだが、拙稿の趣意はそこにはない。

アニメ番組『遊星仮面 (Masque de Planete)』とアニメ番組『赤胴鈴之助 (Akadou Suzunosuke』と、その物語冒頭は非常によく似た体裁をしているが、ある1点に於いて真逆なのだ。
後者が自称 (Self‐appointed) であるのに対して、前者は他称 (Third Person)。その証拠は「人呼んで (They Call Me)」と謂う枕詞にある。

[後者は文字通りに自身の本名を告白しているから敢えてそれ以上の説明は不要だと思うが、] 前者が何故「人呼んで (They Call Me)」と二つ名を背負って名乗っているのかと謂うと、本来的には、遊星仮面 (Masque de Planete) と謂う名は第三者が名付けた仮称であって、それを本人自らが引き受けて名乗っているからに過ぎない。つまり、敢えて本人自らは告げないモノの、遊星仮面 (Masque de Planete) のその仮面の下には、白日の下には晒す訳にはいかない素顔と謂うモノが、否応もなしに存在していると謂う事実が隠されているのだ。

例えばそれはアニメ番組『まんがスーパーマン (Superman)』 [19411943フライシャー・スタジオ~フェイマス・スタジオ ( Fleischer Studios~Famous Studios) 制作 1963フジテレビ系列放映] の冒頭を思い起こして貰えれば、遊星仮面 (Masque de Planete) の存在の際どさがよく解ってもらえると思う。そこでは次の様なナレーションがはいるのだ。
「鳥だ! 飛行機だ! いやスーパーマンだ! (It's A Bird, It's A Plane, It's A Superman)」
ここでは物語の外にいるナレーター (Narrator) が、その存在を本人の了解すら得る事なく、勝手に命名している訳だ。
それを否定するも肯定するも、そう名付けられたモノ次第の勝手である訳だが、自らにその本性を曝す本意がなければ、その仮称をそのまま引き受けるしかない。
遊星仮面 (Masque de Planete) と謂う名を自ら「人呼んで (They Call Me)」と謂うエクスキューズをつけて名乗るのは、それをさらに積極的に推し進めたモノだ。

ここまで読んできて、凄くどうでもいい様な事をさもどうでもよくない事の様に、辻褄合わせに奔走しているかの様に解読する方がいるかもしれないが、例え、それがどんな物語であろうとも、タイトルロールの名称は、如何なる理由で発生したのかは、実は非常に重大事なのだ。

自らが名乗る、創造主 [生みの親であろうと育ての親であろうと] が命名する、その発見者ないしは利害関係のある当事者と思われるモノが命名する、利害関係の及ばない第三者が命名する、さらに謂えば物語の外部にいるモノ [例えば作者] が命名する、それによって、物語が進んだり進まなかったり、ネタバレたり伏線だったりもするのだ。
例えば、歴代の東宝 (Toho)~円谷 (Tsuburaya) 作品に於いて、怪現象やその怪現象の具現者への対策会議と謂う鳩首会議の場において、まず最初に決められるべきはその名前なのだ。

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いやいや、こんな喩えを出さなくてもいい。
映画『千と千尋の神隠し (Spirited Away)』[宮崎駿 (Hayao Miyazaki) 監督作品 2001年制作] と謂う名前の喪失と新たな名前の獲得の物語もあるし、逆に、もっと旧い童話民話の類で良ければ『ルンペルシュティルツヒェン (Rumpelstilzchen)』[グリム童話 (Kinder und Hausmarchen) 1819年刊行 グリム兄弟 (Bruder Grimm) 著] もあれば『大工と鬼六 (A Carpenter And Oniroku) 』もある。
[上記掲載画像は、ウォルター・クレイン (Walter Crane) 画『ルンペルシュティルツヒェン (Rumpelstilzchen)』 [1922年発表] ]

次回は「」。

附記 1.:
美術のある潮流を指す言葉としての写実主義 (Realisme) は、その提唱者であるギュスターヴ・クールベ (Gustave Courbet) 自らが『レアリスム宣言 (Le Realisme)』 [1855年発表] に於いて命名したモノであり、そのパロディの様な様相でアンドレ・ブルトン (Andre Breton) は自己が提唱する潮流を『シュルレアリスム宣言 (Manifeste du surrealisme)』 [1924年発表] に於いて、シュルレアリスム (surrealisme) と命名した。
その一方で、印象派 (Impressionnisme) は彼らを侮蔑する言葉として投げかけられた名称であって、彼らはその名をそのまま引き取り彼ら主宰の展示会を『印象派展 (La premiere exposition des impressionnistes)』と命名した。

附記 2.:
但し、上の様に敢えて党派性を明確にする意図でもって、ある名を命名し、それによって活性化出来るのは、あくまでも例外的な場合ではないかと、個人的には思う。
名を与えられないモノ、もしくは、その様な命名を躊躇わさせるモノ、さもなければ、一切の名を拒絶する様なモノこそ、全く新しいナニカであり続けられるのではないか、とぼくは考える。

附記 3.:
つまり「人呼んで (They Call Me)」とは、ある意味で自らを死に体 (Neary The Dead) であると自嘲する様なモノだ。

附記 4.:
にも関わらずにあの怪物はこう謂って嘆くのである。
「名前さえも付けて貰えなかった (never Given A Name)。」
フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス (Frankenstein : Or The Modern Prometheus)』 [メアリー・シェリー (Mary Shelley) 著 1818年発表] より。
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