2015.05.05.09.50

らいむぎばたけでつかまえて

暇をもてましている毎日が続いている日々のある日、そんな日中がおわった夜の、ねむくもないし、だからといってなにもやるきがおきない時間に読み始めて、その夜があけきる前に読み終わってしまった。
いまから数十年も前の事だ。
ア・ハード・デイズ・ナイト (A Hard Day's Night)』ならぬ『ア・ボア・デイズ・ナイト (A Bore Day's Knight)』と謂う訳さ。

なにが書いてあったのかは、殆ど憶えていない。読み進んでいる渦中も、数行前の出来事はすっかりどこかにいってしまっている。ただ、読み進めている際の、起伏と速度が、読者であるぼく自身にとって、快感か否か、それだけが唯一の価値判断だ。
それは今も変わらないし、小学校の図書室から次から次へと借り受けて読み飛ばしていた頃から、それは始まっている。

あっちへふらふら、こっちへふらふら、行く宛もないままに彷徨っている様な語り口で、実際に主人公であるホールデン・コールフィールド (Holden Caulfield) も、彷徨っているのではなかったか。
全編がモノローグで綴られている筈だから、そこに書かれているのは話者の主観でしかないし、読んでいるぼくはそれを黙って受け止めていく事しか出来ない。それを否定するのは簡単だが、それはそのままその時点で、その本を放り出してしまうしかない。

放り出した勢いでそのまま真夜中、どこぞをほっつき歩けばいい様なモノの、それはそのまま、ホールデン・コールフィールド (Holden Caulfield) の道程をそっくりと辿る事だ。つまり、今さっき否定した筈の行為をそのままなぞった結果、彼を肯定してしまう結果となる。
だからと謂って、眠くもなんともないし、ここには酒 (Alcohol) はおろか睡眠導入剤 (Hypnotic) もない。しかも、その当時はまだ、ネット (Internet) と謂う暇つぶしに便利なツールも存在していない。

結局、ホールデン・コールフィールド (Holden Caulfield) の戯言につきあうしかない。読み終わってしまえばそれはそのまま読了したと謂う実績にもなるし、夜はどんどん更けてゆく。嫌だと謂っても、いずれは朝も来る。

そうやって、その本とそこに書かれている戯言につきあっていると、ある時点になって、急に加速度がついてくる。そのスピードに振り払われない様に、必死になって喰らいついていると、そこでその物語は不意に終了してしまう。

ぼくの読んだ小説『ライ麦畑でつかまえて (The Catcher In The Rye)』 [ 作:J・D・サリンジャー (J. D. Salinger) 1951年刊] はそんな様なモノだった。

読み終えた直後の印象は、もっと早い時期にこの作品に出逢えていたら、もっと違ったんだろうな、と謂う事。

その感慨は今でも変わらないけれども、だからと謂って、それは後悔でも慙愧でもない。
多分、それよりも数週間、それとも数ヶ月、もしかしたら数年、早くてもきっと同じ様な印象だろう。
勿論、それは数週間後だろうと数ヶ月後だろうと数年後だろうと、決して変わらない。

その感慨を得たり知った顔で、あらかじめ喪われた喪失感とでも名付ければ、格好良いのかもしれないが、決してそうではない。

もしもぼくがホールデン・コールフィールド (Holden Caulfield) の妹のフィービー・コールフィールド (Phoebe Caulfield) であったとして、思う存分に自由に駆け回っているこのライ麦畑 (The Rye)で、てめぇの兄貴づらした馬鹿な野郎に、ふん捕まえられたりしたら、一体、どうやって殴り倒せるのだろうか、と謂う様な事なのだ。

てめぇの下らぬ勘違いを棚に上げて、さも自身の方にこそ正義があると思い込んで、それをもってして、幼いモノや弱いモノを実効支配しようとする。
そんな輩は、今も昔も吐いて捨てる程なのだ。

ぼく達はただ、このライ麦畑 (The Rye) を奔り飽いたら、そのまま、どこまでも、地平の涯まで駆け抜けて行ってしまいたい。
それが出来ないのならば、そのまま崖からまっしぐらでいい。

images
上記掲載画像は中村正也 (Masaya Nakamura) の『野分け (Nowake)』

きっとそうなのだ。そうに違いないのだ。

次回は「」。

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