2015.04.17.12.21

One Of These Nights

その日、おれはある顧客のクレーム対応におわれていた。

本来ならばおれの業務の範疇ではない。
だが、突然おしかけてきた客に相対してしまった以上、できうることはしなければならない。

カウンターごしで(おれたちのがわからみれば)理不尽なことをまくしたてるそいつは、どこか別室に案内すべきなのだが、あいにくとそんな場所はない。
だからといって、ここでこのまま、あたまに血がのぼったそいつを野放しにしておくわけにもいかない。
課から一度、はなれたほうがいいのだ。

客を誘導しながら部屋をでて、ぐるっとエレベーターの手前までくると、運よく、むかいあわせにおかれた椅子がワンセット、解放されていた。そのひとつに客をすわらせて、すみにあった観葉植物を手許にひきよせる。めかくしがわりというわけだ。

それからしばらく、客はいいたい放題、まくしたてる。
おれはそれをただきいていればいい。メモはとるが、それは客からでる具体的な数字だけだ。曖昧なあいての記憶を共有してもたかがしれている。どっちにしろ、実作業にあたるのはおれではない。
いまのおれの任務は、客が自分自身に納得がいくまでいかりをぶちまけさせるだけだ。ていのいいサンドバックが、いまのおれだ。

客のいきのきれたところで、おれが提案できるのは、わずかにこれだけだ。
あなたのおっしゃりたいことはわかりました。
当社はあなたのご納得のいくように問題点を改善するよう、努力します。
おって、担当部署から連絡がいきます。
こちらの用紙に必要事項をご記入ください。ご芳名とご住所、連絡先だけで結構です。

そして、名刺をわたす。
こんな際のための、明示されているのは社名と代表電話だけだ。これで充分なのだ。

きたエレベーターで客を送り出したおれは、手許の時計をみて舌打ちをする。
このロスタイムがどう影響するのか。

事後処理は担当部署にたのみ、あとはそいつらの仕事だ。

だが、今日も昼飯はくいっぱぐれちまうんだろう。

[the text inspired from the song "One Of These Nights" from the album "One Of These Nights" by The Eagles]


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