2015.03.17.09.44

よるをぶっとばせ

ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のシングル曲『夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together)』 [1967年発表 アルバム『スルー・ザ・パスト・ダークリー [ビッグ・ヒッツ Vol.2] (Through the Past, Darkly [Big Hits Vol. 2])』 [1969年発表] 収録] には、少なくともふたつの逸話がある。

ひとつはその楽曲が発表された16年後の1983年に公開されたザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) のライヴ映画『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー (Let's Spend the Night Together)』 [ハル・アシュビー (Hal Ashby) 監督作品 1983年制作] のタイトルとなった事。勿論、この映画の素材となった1981年の全米ツアー (1981 North American Tour) 中でこの楽曲が演奏された事 [そのライブ・アルバム『スティル・ライフ ("Still Life" [American Concert 1981])』 [1982年発表] にも収録されている] がおおきな理由のひとつであるが、単純な話、さぁ、コンサートが始まるぜ的なニュアンスのアンセム (Ansem) として相応しいメッセージがこの楽曲のタイトルにそのままずばりと顕れている。

「今夜、一緒にどうだい? (Let's Spend The Night Together)」

そんなパーティ・ソング (Songs For The Paties) ならば彼らの楽曲のどこにも転がっている様にも思えるが、ただ大事な事は、この映画とこのライヴ・アルバムの、あちらこちらで彼ら自身が過去を振り返っている事だ。
バンドの結成から21年。パーティ・ソング (Songs For The Paties) であると同時に、ロックンロール・アンセム (Rock And Roll Anthem) であり、尚且つ、ブライアン・ジョーンズ (Brian Jones) 在籍時代の楽曲である。それが、この曲が映画タイトルとなった理由のおおきなモノだと思うがどうだろうか。

だけれども、この楽曲はそんな栄誉に光り輝くモノではない。
むしろ、バンドの歴史のなかにあって、屈辱的なエピソードにまみれている楽曲なのである。

1967年2月、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) がTV番組『エド・サリヴァン・ショー (The Ed Sullivan Show)』 [19481971年 毎日曜日20:00~21:00 CBS放送] 出演時に、番組側から歌詞の変更を求められたのだ。

「今夜、一緒にどうだい? (Let's Spend The Night Together)」は品位に欠ける。「たまには、一緒にどうだい? (Let's Spend Some Time Together)」に変えてくれ。
バンドはその意向を受け入れてその通りに歌った [こちらで視聴可能]。
[彼らは2年前にこの番組に出演して屈辱的な扱いを受けてはいたのだけれども]。
ヴォーカリスト (Vocalist) であるミック・ジャガー (Mick Jagger) は後日、自身のバンドにおける歌詞の役割の低さを主張しながら、弁明に追われる。

勿論、選択肢のひとつとして歌詞の変更を拒んで、出演を拒否する事も出来たかもしれない。
だけれども、米国のショービズにあって、TV番組『エド・サリヴァン・ショー (The Ed Sullivan Show)』に出演し、エド・サリヴァン (Ed. Sullivan) の支持を得る事は、今のぼく達の想像以上におおきい事なのだ。

エルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) もそう。
エルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) が、彼の音楽以上に蠱惑的なセクシャルな腰の動きを撮影 / 放映されなくても、エド・サリヴァン (Ed. Sullivan) 自身が握手を求め、エルヴィス・プレスリー (Elvis Presley) に献辞を捧げる事の方が、視聴者への影響力の方が大きいのだ。
エド・サリヴァン (Ed. Sullivan) は音楽的な嗅覚もしくはそれをビジネスとしての嗅覚にする才能は秀でたモノがある上に、思想信条的には極めて保守的なのだから。彼が評価し受け入れる事即ち、全米の"良心的な"家庭の婦女子に受け入れられると謂う暗黙の了解が成立しているからだ [正確に謂えば、"良心的な"家庭の婦女子のその両親達だけれどもね]。

[そう謂う意味では、ザ・ビートルズ (The Beatles) の米上陸 (The Beatles In The United States 1964) に際してエド・サリヴァン (Ed. Sullivan) と彼の番組『エド・サリヴァン・ショー (The Ed Sullivan Show)』が果たした役割はとてつもなくおおきいのだけれども、ここでは割愛する。]

[日本に於いて、エド・サリヴァン (Ed. Sullivan) に匹敵する人物は、もしかしたらタモリ (Tamori) になるのかもしれないが、少なくとも彼はエド・サリヴァン (Ed. Sullivan) 的な立ち回りからは巧妙に遁走し続けている様にもみえる。]

話を元に戻す。

勿論、選択肢として、一度した約束を反故にする事も出来たのかもしれない。
1967年9月にTV番組『エド・サリヴァン・ショー (The Ed Sullivan Show)』に出演したザ・ドアーズ (The Doors) は彼らのセカンド・シングル曲『ハートに火をつけて (Light My Fire)』 [アルバム『ハートに火をつけて (The Doors)』 [1967年発表] の演奏の際に、歌詞の変更を求められる。

「もっとハイになろうぜ (Girl, We Couldn't Get Much Higher)」は品格に欠ける。それに第一、マリファナ (Marijuana) を奨めている様だ。「もっと、なかよくしたいんだ (Girl, We Couldn't Get Much Better)」に変えてくれ。
バンドはそれに同意するも、実際のパフォーマンスでは元の詞のまま、ヴォーカリスト (Vocalist) のジム・モリソン (Jim Morrison) は歌唱。「もっとハイになろうぜ (Girl, We Couldn't Get Much Higher)」は全米に放映されてしまう。
演奏後、エド・サリヴァン (Ed. Sullivan) はバンドとの握手を拒絶し、彼らは2度と番組への出演を求められなかった。

ふたつの楽曲のふたつの歌詞の変更が求められたのは同じ年の話だ。1962年結成の英国のバンドはそれを受け入れ、1967年デヴューの米西海岸出身のバンドは事実上、拒否した。
どちらが得なのかどちらが損なのか、もしくは、どちらが格好良くてどちらが無様なのか。
ぼく達は、それを冷静に考えなければならない。

images
但し、その6年後、デヴィッド・ボウイ (David Bowie) は『夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together)』に関しては、ある種の模範解答を示している [掲載画像はこちらから]。
彼のアルバム『アラジン・セイン (Aladdin Sane)』 [1973年発表] に収録されたその『夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together)』 では、こう歌っているのだ。

「一緒にどうだい、いまここで (Let's Spend The Night Together, Now)」と。

ふくれっつらをしている筈のエド・サリヴァン (Ed. Sullivan) にはこう伝えればいい。
「だってぼく達はいま、TV番組『エド・サリヴァン・ショー (The Ed Sullivan Show)』を観ているんだろう!?」って。

次回は「」。

附記 1.:
単純な話、オリジナルの『夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together)』よりもデヴィッド・ボウイ (David Bowie) のカヴァー『夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together) 』の方が数段、格好いいアレンジだとぼくは思う。

附記 2.:
ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) と謂うバンドの魅力は、例えばデヴィッド・ボウイ (David Bowie) が『夜をぶっとばせ (Let's Spend The Night Together)』を格好良くカヴァーした際に、意図的に排除した格好悪さを、敢えて我が意を得たりと引き受けてしまうところにあるのだと思う。

附記 3. :
だからと謂ってその手法をそのまんま真似したって無駄だぜ!?
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