2015.02.03.09.05

みのたうろすのさら

宇宙船が不時着した惑星で主人公が体験したのは、地球とは支配被支配が全く逆転した世界だった。

と、書くと映画『Planet Of The Apes / 猿の惑星 (Planet Of The Apes)』 [監督:ティム・バートン (Tim Burton) 2001年制作] を連想してしまうかもしれないが、それは当たらずともいえ遠からず、この物語の舞台は、猿 (Ape) ではなくて牛の惑星 (Planet Of The Cattle) だからだ。

短編マンガ『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] は、藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) が発表したいくつもの"大人向け (For Adults)"短編SFマンガのひとつであって、しかもその最初の作品である。

その経緯は、この作品が収録された選集『藤子不二雄SF全短篇 第1巻:カンビュセスの籤 (Minotaurus's Plate)』[作:Fujiko・F・Fujio Short Stories Volume 1.)』[1987年刊行] の作者自身による『まえがき (Foreword)』で詳述されている。但し、その書籍自体は現在では絶版の様なので、その『まえがき (Foreword)』自体を読む事は困難かもしれない。こちらでその経緯が紹介されているから、興味のある方はこちらを読む事をお薦めする。
ぼくがその『まえがき (Foreword)』で記述されているその内容で必要なのは、「最初の作品」である事だけなのだから。

藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) の"大人向け (For Adults)"短編SFマンガには、傑作がいくつもあるのだけれども [そのうちのいくつかはこちらこちらで既に紹介済みだ]、そんな傑作群からみれば、短編マンガ『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] は少し、格が落ちる。

物語の主人公を演じたのは21エモン (21 Emon) [マンガ『21エモン (21 Emon)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 19681969週刊少年サンデー連載] の主人公] だけれども、例えば『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] が"子供向け (For Children)"のマンガ『モジャ公 (Mojacko)』 [作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 19691970週刊ぼくらマガジン連載] の物語の1エピソードであっても不思議ではない。逆に謂えばマンガ『モジャ公 (Mojacko)』 [作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 19691970週刊ぼくらマガジン連載] のサイエンス・フィクション / Science Fictionとしての完成度は決して低くはない。
"子供向け (For Children)"のマンガ『モジャ公 (Mojacko)』 [作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 19691970週刊ぼくらマガジン連載] を発展させたその先に"大人向け (For Adults)"の短編マンガ『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] があるのだ [そもそもマンガ『モジャ公 (Mojacko)』 [作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 19691970週刊ぼくらマガジン連載] 自体がマンガ『21エモン (21 Emon)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 19681969週刊少年サンデー連載] の続編的位置付けでもある訳だし]。

だから、短編マンガ『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] と"大人向け (For Adults)"短編SFマンガの傑作群との違いを指摘しようと思えば、そこにある寓意性 (Allegoricalness) とその結果もたらされる多様な解釈の可能性だろう。

少なくとも、"大人向け (For Adults)"短編SFマンガの傑作群のその殆どは、その作品の中で、たったひとつの事だけしか語っていないし、そして、語っていないからこそ、傑作であり得る訳なのだ。

短編マンガ『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] は、そうではない。

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例えば作中に、主人公の独白として次の様な台詞が登場する。
言葉は通じるのに話が通じないという ……これは奇妙な恐ろしさだった」
[掲載画像はこちらから]

物語の中では、遭難した主人公とその惑星の住人達 [牛 (Cattle)] とのコミュニケーションの成立のし難さを語るモノではあるが、この作品を読むぼく達は、必ずしもこの台詞が主人公のモノだけではない、と思う。
異文化や異言語のヒト達との間に生じる実感ではないのだ、この台詞は。
日々の生活の実感として、こんな感慨を抱かされる体験を誰しもがしていると、ぼくは思うのだが如何か?

だから、これから綴るのは、そんな多様な解読が可能なこの物語のなかのほんのひとつの事なのである。

冒頭に映画『Planet Of The Apes / 猿の惑星 (Planet Of The Apes)』 [監督:ティム・バートン (Tim Burton) 2001年制作] を指摘したけれども、もしも仮に短編マンガ『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] をハリウッド (Hollywood) 資本の大作映画として、観ようとしたら、不可解な事がひとつある。
と、謂うか、大作映画に決して相応しからない物語の展開だ。恐らく、それをもって、映画化されないのではないだろうか、と謂う様な、大きな瑕疵、物語上の不備と謂うモノだ。

それは何故、主人公はヒロインを救出しなかったのだろうか、と謂う事。

否、救出しなかったからこそ、物語の最後の齣で描かれている食事シーンのオチが効いて、"大人向け (For Adults)"短編SFマンガとしての体裁をまとってはいるのだが。

だけれども、ハリウッド (Hollywood) 資本の大作映画ならば、物語の世界観を大きく崩すかもしれない誤謬が発生するのも厭わないまま、主人公とヒロインの食事シーンを演出するのではないだろうか。
[個人的には、最後の食事シーンが冒頭に登場し、そこから始まる残酷な物語を描き出す、演出家が居てもいいのだけれども? きっと、その演出家こそが小説『家畜人ヤプー (Yapou, betail Humain)』 [作:沼正三 (Shozo Numa) 195619758奇譚クラブ連載] を映像化出来るのだろう。]

いやいや、そおゆうことぢゃあない。

ヒロインを救出しない物語を描いてしまったのは、作者である藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) が日本人 (Japanese) であって、一神教 (Monotheism) の埒外にある世界観をもっているからなのだ。
文明と文明、文化と文化が衝突するはざまにあって、その一方に加担してその一方の価値観や倫理観にだけ従って行動するのを是と、藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) はしなかったのだ [もしくは出来なかったのだ]。

それをぼく達はどう思うべきなのか、今?

次回は「」。

附記:
関悦史 (Etsushi Seki) の俳句作品『皿皿皿皿皿血皿皿皿皿 (Ten plates are there, one of, in the center of these blood on.)』 [句集『六十億本の回転する曲がつた棒 (The Six Billion bent And Spinning Bars)』 [2011年刊行] より] の様に、『ミノタウロスの皿 (Minotaurus's Plate)』[作:藤子・F・不二雄(Fujiko・F・Fujio) 1969 ビッグコミック掲載] と謂う題名は、"ミノタウロスの血 (Minotaurus's Blood)"と謂う語句のパロディ (Parody) かなにかと思っているのだけれども、それに該当する語句にはこれまで一切、お目にかかった事はないのだった。
だから、誰でもいいから"ミノタウロスの血 (Minotaurus's Blood)"と謂う作品を創作すべきだと思う。今すぐにでも。
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